卵10個312円、過去最高。それでも卵は、いちばんコスパの良いたんぱく質だった
卵、1日にいくつ食べているだろうか。
10月27日、農林水産省が、10月にお店で調べた食べ物の値段を発表した。卵10個入りの平均は312円。この調査が始まった2003年以来、いちばん高い値段だという。
わたしは、卵が大好きだ。ゆで卵、だし巻き卵、目玉焼き。1日に1個くらいは食べている。値上がりは感じている。でも、1個にすると数円なので、大きな値上がりという感覚は、それほどない。
大好きな卵のことだから、この機会に、気になることをまとめて調べてみた。
💰「それでも、卵はいい食べ物?」
🍚「生で食べるのは、日本人だけ?」
🌍「世界の卵は、どうなっているの?」
1. 卵は、どれくらい高くなったの?
農林水産省は、毎月、全国470のお店で、卵や肉の値段を調べている。特売ではない、ふだんの値段だ。10月の卵(大きさはいろいろ混ざった10個入り)は312円で、前の月より3円高い。過去5年の同じ月の平均と比べると、19%高い。
卵は昔から値段が安定していて、「物価の優等生」と呼ばれてきた。このグラフでも、2019年からしばらくは、200円台前半でほとんど動いていない。
その落ち着きが、2回くずれた。1回目は2023年で、7月に306円まで上がり、翌年の春に244円まで戻っている。2回目が今回だ。2024年の夏から上がりはじめ、2025年8月からは、300円を下回っていない。
農林水産省は、鳥インフルエンザで卵をうむ鶏が減り、その影響がいまも続いているとみている。鳥インフルエンザが見つかった農場では、鶏がすべて処分される。ここ数シーズンの規模は、次のとおりだ。
ただ、過去最高なのは、お店の値段だけだ。お店に卸す前の値段(JA全農たまご、東京のMサイズ1kgの基準値)は、10月27日に320円。2023年4〜5月の350円より低い(10月に入って、また上がってきている)。
では、なぜお店の値段だけが最高になったのか。カギは、卸売の値段が高かった「長さ」だ。2023年は、卸売が300円を超えたのは半年ほどで、夏には下がりはじめた。今回は、2025年2月から1年半ほど、300円以上が続いた。1年の平均で見ると、2025年の324円は、2023年の306円より高い。
2023年は、卸売が最高になった4〜5月から2か月ほど遅れて、7月にお店の値段が最高になった。その間に、卸売はもう下がりはじめていた。今回は高い卸売が長く続いたので、お店の値段も上がりきって、過去最高になった、と考えられる。
2. 卵のいいところは? 栄養・日持ち・コスパ
312円を10で割ると、1個31円。2年前(2024年10月の259円)より1個約5円、去年(303円)より約1円高い。わたしの1日1個に当てはめると、1年で、2年前より約1,900円、去年より約330円多く払う計算だ。
それでも、わたしは、卵はすぐれた食べ物だと思っている。いいところはいろいろあるけれど、ここでは、栄養、日持ち、コスパの3つを見ていく。
① 栄養:1個で、たんぱく質が約6g
卵1個(食べられる部分で約52g)には、たんぱく質が約6.3g入っている。ほかにも、いろいろな栄養が少しずつ入っている。
ビタミンCと食物繊維は、ゼロだ。卵だけで全部がそろうわけではないので、野菜などと組み合わせて食べるのがいい。
② 日持ち:賞味期限は「生で食べられる期限」
日本の卵の賞味期限は、「生で食べられる期限」だ。農林水産省によると、いまは最長21日で、家の冷蔵庫に7日入れておくことも含んでいる。期限を過ぎても、割ってみて問題がなければ、中まで70度になるように、しっかり加熱すれば食べられる。
温度の大切さは、数字にも出ている。日本で賞味期限を決めたときの計算では、卵の中で菌が増えはじめるまでの日数は、10度なら57日、20度なら30日、30度なら13日。冷蔵庫に入れておくのは、理にかなっている。
ちなみに、保存のしかたは、国によってまったくちがう。
ヨーロッパのスーパーでは、卵が常温の棚に並んでいることがある。洗っていない卵は、殻の表面の膜が、菌を防ぐ壁になっているからだ。日本は、洗って菌を落とし、家では冷蔵庫で保つ。どちらも、菌から卵を守るためのやり方だ。
生で食べるのは、日本人だけ?
わたしが卵かけご飯を食べるのは、月に1〜2回くらい。カレーにも、生卵を落として醤油をかける。
生で食べるのは日本人ぐらい。そう思っていたけれど、農林水産省によると、そうではない。韓国のユッケや、ポーランドのタルタルステーキのように、生の卵を使う料理は海外にもある。香港やシンガポールでは、日本から伝わった卵かけご飯が食べられている。
国としての考え方も、分かれている。
- アメリカ:生の卵や半熟の卵は、だれにも勧めていない。生で使うなら、殺菌した卵を使うよう勧めている
- イギリス:品質の認証マーク(ブリティッシュ・ライオンなど)のついた卵なら、子どもや妊娠中の人、お年寄りも、生や半熟で食べられるとしている(重い病気で免疫が弱っている人は除く)
日本で生で食べられるのは、農場や、卵を選んで包む施設での衛生管理、卵の規格などの対策を、長く続けてきたからだと、農林水産省は説明している。2007〜2008年に店で売られている卵2,030パックを調べたときも、卵の中身から食中毒の菌(サルモネラ)は見つかっていない。
③ コスパ:たんぱく質が、肉より安い
同じ調査には、肉の値段も並んでいる。体をつくるたんぱく質を、同じ量とるのにいくらかかるかを計算してみた。
卵は、たんぱく質10gあたり約50円。鶏もも肉の約半分で、豚ロースの3分の1だ。過去最高になっても、肉のどれよりも安い。
500円玉1枚で比べてみる。卵なら約16個買えて、たんぱく質は約100g。同じ500円で鶏もも肉を買うと、たんぱく質は約53gになる。
おいしさも、卵のいいところだ。ゆでても、焼いても、だしと巻いても、生のままでもおいしい。しかも、1個から使えて、ゆで卵にすれば持ち運びもしやすい。
3. 世界の卵は、どうなっているの?
まず、食べる量から。卵の業界の国際的な集まりなどに各国が報告した数字では、日本は、1人あたりの1年の消費量で、世界4位だ。
メキシコでは、トルティーヤ(とうもろこしの薄いパン)に目玉焼きをのせ、トマトと唐辛子のソースをかける「ウエボス・ランチェロス」など、朝ごはんの卵料理が定番だ。メキシコの報道は、手ごろな値段で栄養がとれて、朝・昼・晩のどこでも食べられることを、よく食べる理由に挙げている。
1日1個のわたしは、1年で365個くらいになる。日本の平均より多いけれど、メキシコの約410個には届かない。
つくる量では、中国がとび抜けている。国連食糧農業機関(FAO)によると、2024年に世界でつくられた卵は約9,369万トンで、そのうち約3分の1が中国だ。日本は約248万トンで、8番目に多い。
では、卵をよく食べる国では、卵の値段はどう動いてきたのか。上位5か国と、6位のアメリカの、この5年の動きを、それぞれの国の物価全体の上がり方と並べてみた(2位のアルゼンチンは数字の桁がちがうので、グラフの外に書いた)。
物価全体より、卵がはっきり速く上がったのは、日本だけだった。日本の物価全体は5年で14%ほどの上昇だけど、卵は41%上がっている。
ロシア、コロンビア、メキシコは、むしろ逆だ。卵は上がってはいるけれど、物価全体ほどではない。メキシコの卵は、2025年の夏に高くなったあと、2026年7月までに3割ほど下がった。
アメリカは、途中で大きく動いている。鳥インフルエンザで、2025年の1年に卵をうむ鶏が4,180万羽失われ、2025年3月には1ダース6.23ドルと、データのある1980年からの最高をつけた。そこから下がって、2026年9月は2.27ドル。5年で見ると、卵は物価全体とほぼ同じ24%ほどの上昇に落ち着いている。
2位のアルゼンチンは、桁がちがう。この5年で、物価全体が約24倍になった。卵も、12個で152ペソから3,941ペソと、約26倍だ。ただ、物価全体とほぼ同じ速さで、卵だけが特に高くなったわけではない。
日本の卵は、長いあいだ「物価の優等生」だった。そのぶん、この5年の上がり方が、ほかの物より目立っている。
4. わたしの見方
卵は、過去最高になった。でも、たんぱく質で比べれば、いまも肉よりずっと安い。
ただ、長い目で見ると、話は少しちがってくる。2019年7月の205円から、いまは312円。7年あまりで、約1.5倍になった。
ほかのものの値段も上がっていく流れの中で、卵も、これからゆるやかに上がっていくと思う。
1個にすると数円の値上がりでも、続けば大きくなる。たとえば、卵の値段が毎年2%ずつ上がると、いまの312円は、20年後に約464円、30年後に約565円になる計算だ。
経済学者のケインズは、1919年の本に、こう書いている。
国は、人びとの財産の大事な一部を、
こっそりと、だれにも気づかれずに
取り上げることができる。
ジョン・メイナード・ケインズ『平和の経済的帰結』第6章(1919年)
ケインズは、第一次世界大戦のあとの講和会議に、イギリスの代表団の一員として出ていた。戦争に負けたドイツに、払いきれないほどの賠償を求める条約に反対して代表団を離れ、すぐにこの本を書いている。そのころのヨーロッパでは、戦争のお金をまかなうために国がお札を刷り、お金の価値が大きく下がっていた。
この一文でケインズが言いたかったのは、インフレは「気づかれない」のがこわい、ということだと思う。税金なら、取られたことがわかる。でも、物の値段がじわじわ上がると、手元のお金の額は変わらないまま、買えるものだけが少しずつ減っていく。
いまの日本は、そのころのヨーロッパとはちがう。それでも、卵1個の数円の値上がりは、同じことを教えてくれている。
だから、せめて卵の値上がりくらいには追いつけるように、資産運用を続けていきたい。
では、いまのところ、追いつけているのか。卵の調べ方が今の形になった2019年7月から、卵の値段を、わたしが持っているオルカン(世界中の株をまとめて持てる投資信託)とS&P500(アメリカの大きな会社500社をまとめて持てる投資信託)と比べてみた。
卵は約1.5倍。オルカンは約3.5倍、S&P500は約4.1倍だ。2019年7月に、卵10個ぶんの205円をオルカンに入れていたら、いまは約722円。卵が23個買える。
未来のことは、わからない。この7年あまりは、円安(外国の株の値段を円で見ると、高くなる)も追い風になっていた。それでも、オルカンやS&P500に投資していれば、いまのところ、卵の値上がりには対応できそうだ。
卵も、これまでどおり食べる。オルカンとS&P500の積み立ても、これまでどおり続けていく。
5. まとめ
- 10月の卵10個の平均は312円で、過去最高と報じられた。農林水産省は、鳥インフルエンザで鶏が減った影響とみている
- 卸売の値段は2023年の最高値より低い。高い卸売が1年半ほど続き、お店の値段も上がりきった
- たんぱく質10gあたりでは卵は約50円。鶏もも肉の約半分で、肉のどれよりも安い
- 日本は1人あたりの消費量で世界4位。上位5か国とアメリカで、5年で卵が物価全体よりはっきり速く上がったのは日本だけ
- 日本の賞味期限は「生で食べられる期限」で最長21日。ヨーロッパは卵を洗わず、売る前は冷やさない
- 生で食べるのは日本だけではなく、アメリカは勧めず、イギリスは認証つきなら食べられるとする
- 2019年7月から、卵は約1.5倍、オルカンは約3.5倍。いまのところ、卵の値上がりには対応できそう
・過去最高の報道:NHK(2026年10月27日)
・卸売の値段:JA全農たまご「相場情報」、同(月ごとの平均)
・鳥インフルエンザ:農林水産省(シーズンごとの比較)、同(2025〜26年シーズン)、同(2026〜27年シーズン)
・たんぱく質の量:文部科学省「食品成分データベース」
・消費量:鶏鳴新聞(2023年の消費量)、UnoTV(メキシコ、2026年8月27日)、同(2024年の消費量)
・生産量:FAOSTAT(2024年)
・6か国の卵と物価全体:総務省「消費者物価指数」、メキシコ国立統計地理情報院(INPC)、コロンビア国家統計局(IPC、2026年9月)、ロシア連邦統計局(平均の消費者価格)、アルゼンチン国家統計センサス局(平均の消費者価格)、米労働統計局(卵の平均価格、消費者物価指数、FRED経由)、鶏の数は米農務省経済調査局(2026年2月)
・賞味期限と生で食べること:農林水産省「aff」2024年4月号、鶏卵日付表示等改訂委員会(2010年)、農林水産省(市販の卵の調査)
・洗う国と洗わない国:EU規則 No 589/2008、米農務省 食品安全検査局、厚生労働省(卵の選別包装施設の手引書案)
・各国の生食の考え方:米食品医薬品局(FDA)、英国政府「Home food fact checker」
・オルカンとS&P500の基準価額:三菱UFJアセットマネジメント(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の設定来の基準価額)
・格言:John Maynard Keynes『The Economic Consequences of the Peace』(Project Gutenberg)第6章(訳はわたし)
関連記事
新しい記事は X(@harukamuy) でお知らせしています。




