新NISAで増やしたお金、どう取り崩す? 暴落がきたら?
増やしたお金、どうやって使うか決めているだろうか。
10月22日のAERA DIGITALに、新NISAの「出口難民」という記事が出ていた。増やし方の情報はあふれているのに、どう売って使えばいいのかが見えない人も少なくない、という話だ。投資ブロガーの水瀬ケンイチさんがXで本のテーマを募ると、100件を超えるリクエストのうち3割が「出口」についてだったという。
わたしは、まだ1円も取り崩していない。生活費は、仕事の収入でまかなえているからだ。それでも、いつかは使う日が来る。
📉「取り崩している最中に暴落したら?」
📏「よく聞く4%ルールは?」
🧭「わたしは、どう取り崩すの?」
1. 取り崩し方って、何があるの?
AERAの記事で紹介されていた取り崩し方は、大きく3つある。
例えると、定額は「毎月同じ額のおこづかいを、貯金箱から出す」。定率は「貯金箱に入っている分の、決まった割合だけ出す」。必要な分だけは「財布が足りなくなったときだけ、貯金箱から足す」に近い。
水瀬さんがとくに注目しているのは、3つ目の「必要な分だけ」だ。
必要になった時に、必要な分だけ取り崩していけばいいのです
2. 取り崩している最中に暴落したら?
お金が減ったところから、さらに売ることになるからだ。
そこで、3,000万円から取り崩した場合を計算してみた。ふだんは年5%で増え、最初の年だけ30%下がるとする。2008年には、世界の株が1年で約42%下がっている。大げさな想定ではない。
比べたのは3つ。毎年120万円(3,000万円の4%)ずつ取り崩す定額、残高の4%ずつ取り崩す定率、そして取り崩さない場合だ。「必要な分だけ」は、何にいくら使うかで変わるので、ここでは計算に入れていない。
定額は、尽きる時期が、利回りと取り崩す額で大きく変わる。
利回りは、自分では選べない。でも、取り崩す額は自分で決められる。120万円を100万円にするだけで、34年目が71年目になる。
定率は、残高が減れば取り崩す額も減るので、尽きることはない。そのかわり、使えるお金が減る。年5%なら、40年たっても最初の120万円に戻らない。
使わずに持ち続ければ、下がった分を取り戻す時間を、まるごと使える。
3. よく聞く「4%ルール」は?
4%ルールは、最初の年に資産の4%を取り崩し、翌年からはその額を物価に合わせて増やしていくやり方だ。2章の定額(毎年120万円)は、ここから物価の調整を抜いた形にあたる。
出どころは、1994年にアメリカのウィリアム・ベンゲンが書いた論文だ。ただ、ほかの国でも同じようにいくとはかぎらない。
日本の株と債券だけでは、4%でももたないことが多かった。4%は、答えではなく、確かめるための物差しだと思う(くわしくは4%ルールの記事)。
一方、アメリカでは、4%は慎重すぎるという見方もある。ベンゲン本人は、Business Insiderの取材で、計算しなおした4.7%でさえ、歴史上最悪の事態に備えた、とても慎重な数字だと話している。いまの市場なら、5.5%のほうが現実的だという。4%どおりに取り崩しても、30年でお金が50%増える可能性がある、という統計学者の研究もある。
それなのに、使わなさすぎる人も多い。80代半ばの退職者の約3分の1が、退職したときと同じか、それ以上のお金を持ったままだった(従業員給付研究所の調査)。ベンゲンは、これを「お金が尽きることへの恐怖」と呼んでいる。
すべてお金を使い切ることは難しいかもしれない。ただ、使わないまま終えてしまうと、貯めるために費やした労働と時間が報われない。
4. わたしは、どう取り崩すの?
わたしの老後のお金の使い方は、3段になっている。
これは、高配当株の出口戦略の記事にも書いてきた形で、いまも変わっていない。
つまり、わたしの取り崩しは「必要な分だけ」だ。暮らしの土台を年金と配当でまかなうので、インデックスから取り崩す額は小さくできる。
5. わたしの見方
およそ140年前、アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、雑誌に寄せた「富」という評論の終わりに、こう書いている。
恥とともに死ぬ。
アンドリュー・カーネギー「富」(1889年)
この評論では、お金持ちのお金の使い方を、順番に書いている。まず、見せびらかさずに、ほどよく暮らす。家族の暮らしに必要な分も、ほどよくまかなう。そのうえで余ったお金は、生きているうちに、世の中のために使い道を決める。それをせずに、あの世に持っていけない大金を残して死ぬ人は、いずれ世間からこう言われる、というのがこの言葉だ。
カーネギーの順番は、「まず必要な分、そのあとに余り」だ。わたしの出口も、順番は似ている。暮らしに必要な分は年金と配当でまかない、インデックスは、旅行や医療費など、必要な分だけ取り崩す。余りの行き先はまだ決まっていないが、カーネギーの場合は寄付だった。
貯めるばかりで人生を楽しめなければ、意味がない。死ぬ前にいちばんのお金持ちになっても、仕方がない。必要な分をわかったうえで、ある程度は我慢せずに使っていくことも、必要なのかもしれない。
増やし方の次は、使い方だ。
6. まとめ
- 新NISAで増やしたお金の「出口」に迷う人は少なくない。水瀬ケンイチさんへのリクエストの3割が、出口の話だった
- 取り崩し方は大きく3つ。決まった額、決まった割合、必要な分だけ
- 3,000万円から毎年120万円を取り崩すと、最初の年に30%下がれば34年目で尽きる(年5%で計算)。定率なら尽きないが、下げた翌年に使えるお金は約81万円に減る
- 利回りは選べないが、取り崩す額は決められる。120万円を100万円にするだけで、尽きるのは71年目まで延びる
- 4%ルールの生みの親は、いまの市場なら5.5%でもいいと話す。使わないまま終えると、貯めるために費やした時間が報われない
- わたしは年金と配当で暮らしの土台をまかない、インデックスは必要な分だけ取り崩す。まだ1円も取り崩していない
・2008年の下落:MSCI ACWI(ドル建て、配当込み)の年間騰落率
・取り崩しの計算:仮の条件で、クロちゃん(わたしが使っているAI、Claude)に計算してもらった
・4%ルール:William P. Bengen「Determining Withdrawal Rates Using Historical Data」(Journal of Financial Planning、1994年)、Wade D. Pfau「An International Perspective on Safe Withdrawal Rates」(Journal of Financial Planning、2010年)
・ベンゲンの4.7%(7種類の資産に分けた計算):William P. Bengen『A Richer Retirement』(2025年8月)
・ベンゲンの5.5%、シャーカンスキーの研究、従業員給付研究所の調査:Business Insider Japan「FIREナンバーとして知られる『4%ルール』の考案者は、あなたにもっと使うよう勧める」(2026年8月17日)
・日本のデータでの検証:城下賢吾・木下真「4%ルールは可能か 日米比較」(山口経済学雑誌 第62巻第1号、2013年)
・格言:Andrew Carnegie「Wealth」(The North American Review、1889年6月号)(訳はわたし)
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