アンソロピック上場が流れを変える? AIは買いか売りか?
AIの株、持っているだろうか。
10月27日、日経平均は1,078円上がって、6万3,268円で終わった。きっかけは、アメリカのAIの会社、アンソロピックが出した1冊の書類だ。上場(株式市場で、だれでも株を売り買いできるようにすること)のための届出書で、そこに売上や赤字の数字が初めて並んだ。
ここ数週間、AIの株は売られていた。「AIに巨額のお金を使っているけれど、本当に元が取れるの?」という不安からだ。その流れが、1日で変わったように見える。
📈「なぜ、流れが変わったの?」
🗺️「AIの会社の景色は、どうなっている?」
🐾「AIは、買いか売りか?」
1. 何が出たの?
アンソロピックは、AIの「Claude(クロード)」を作っている会社だ。アメリカ時間の10月26日、上場のための届出書を、アメリカの証券取引委員会(SEC)に出した。
14倍といっても、もとが小さいのでは? と思う人もいるかもしれない。
その答えになりそうな数字も、届出書に並んでいる。会社が「これから」の根拠として出しているものだ。
わたしの感覚では、AIはもう必需品だ。インターネットやメールのように、なくては成り立たない。
③の数字は、その感覚に近い。届出書は、お客さんの使い方を「最初はひとつの用途から始まり、部署や仕事の流れに広がっていく」と書いている。
例えると、スマホに近い。スマホも、最初は電話とちょっとした調べものぐらいだった。それが、地図や動画、買いもの、支払いにまで使うようになり、気づけば、使うデータ通信量(ギガ)はずっと増えている。便利だとわかると、使う場面が一気に広がっていく。
スマホのデータ通信量にあたるのが、AIでは「トークン」だ。AIに読ませた文字と書かせた文字を数える単位のことだ。AIの料金のしくみは、大きく2つに分かれている。
月20ドルなどの決まった料金で、決まった量まで使える。スマホでいえば、定額のプランに近い
自社のサービスや仕事の流れにAIを組みこむ会社は、使ったトークンの量に応じて払う。スマホでいえば、使ったギガの分だけ払うプランだ
届出書によると、2026年1〜6月の売上のうち、約8割が使った分だけ払う形で、約2割が定額のプランだった。だから、会社がAIを使う場面を広げ、使うトークンが増えると、払う金額も増えるしくみだ。
2. なぜ、流れが変わったの?
AIの株が売られていた理由を、もう少しくわしく見てみる。
AIの設備を貸すアメリカのコアウィーブは、500億ドルの借金を抱え、株も社債(会社がお金を借りるために出す債券)も大きく売られた。AIに巨額のお金をつぎこんでいるのに、それを回収できるほどのお金が、最後に使う人から本当に入ってくるのか。そこが疑われていた。
届出書には、その問いを考える材料になる数字がある。4〜6月、アンソロピックは、AIを動かす計算の費用(主にクラウドの利用料)に約56億ドルを使い、約116億ドルの売上を上げた。計算の費用1ドルあたり、約2ドルの売上が入っていることになる。
市場の反応は早かった。
AI向けの半導体を検査する装置を作るアドバンテストは、9%上がった。一方で、わたしが2株だけ持っているキオクシアは、ほとんど動かなかった。同じAI関連でも、反応はそろわない。
届出書には、気になる点も、会社自身の言葉で書かれている。
このように、今までの不安が消えたわけではない。
3. AIの会社の景色は、どうなっている?
AIにかかわる会社は、ざっくり4つの層に分けられる。
OpenAI(ChatGPT)、アンソロピック(Claude)、グーグル(Gemini)、スペースX(xAIを合併)、メタなど
マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタ、スペースX。設備を貸すコアウィーブなど
エヌビディア、TSMC、アドバンテスト、キオクシアなど
仕事にAIを入れる世界中の会社と、わたしたち
面白いのは、お金がぐるぐる回っていることだ。アンソロピックは、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、スペースXなどから、計算の設備を借りている。そのグーグルとアマゾンは、アンソロピックの株主でもある。たとえばグーグルは、AIをつくるライバルであり、アンソロピックに設備を貸す会社であり、株主でもある。
このぐるぐるの中で、お金が本当に外から入ってくるのか。いちばん外側の④、AIを使う会社と人が、お金を払い続けるのか。
4. AIは、買いか売りか?
4つの層のどこが、どの会社が、いちばん得をするのかは、わからない。だから、わたしはオルカン(世界中の株をまとめて持てる投資信託)とS&P500(アメリカの大きな会社500社をまとめて持てる投資信託)で、まとめて持っている。
この2つの中には、AIの主要なプレイヤーたちがずらりと並んでいる。
オルカンの中では、この9社だけで2割を超える。S&P500では、3割を超える。表のほかにも、AI向けのメモリを作るマイクロンが両方に、AIの半導体をつくるTSMCがオルカンに入っている。オルカンとS&P500を通じて、わたしはAIの設備を持つ会社も、半導体の会社も、すでにかなり持っていることになる。
まだ上場していないOpenAIやアンソロピックは、いまはオルカンに入っていない。では、上場したらどうなるのか。オルカンとS&P500は、それぞれ別の「指数」(どの会社を入れるかのルールと、その一覧)にそって中身を決めているので、ルールが違う。
とても大きな会社の上場には、早く入れるルールがある。条件を満たせば、上場から10取引日後(土日などを除いて2週間ほど)に入る
上場から12か月たっていること、そして黒字であること(直近の3か月と、直近1年の合計の両方)が条件。会社が大きくても例外はない
スペースXのときも、このルールどおりだった。6月12日に上場して、6月29日にはオルカンに入った。S&P500には、まだ入っていない。くわしいルールは、スペースXが上場したときに調べた記事にまとめている。
アンソロピックは、最終的な損益が大きな赤字なので、S&P500には、しばらく入らないことになる。一方で、オルカンなら、条件を満たせば、上場から2週間ほどで入る可能性がある。S&P500も、黒字になって条件を満たせば、取りこまれる可能性がある。
取りこむだけではない。小さくなった会社は、外れていく。AIの勝者が、いまの会社から別の会社に変わっても、オルカンもS&P500も、ルールにそって中身を勝手に入れ替えてくれる。
ウォーレン・バフェットは、2013年の株主への手紙で、こう書いている。
勝者を選ぶことではない。
本人にも、その「助っ人」たちにも、それはできない。
全体としてうまくいくはずの会社を、
まとめて持つことだ。
ウォーレン・バフェット「株主への手紙」(2013年)
この言葉の前に、バフェットはこう書いている。ほとんどの人は、ひとつひとつの会社の将来のもうけを予想できるほど、会社のことを知らない。でも、いい知らせがある。ふつうの投資家に、その力はいらない。アメリカの企業は全体として、長い目で見ればうまくやってきたし、これからもそうだろう、と。
注目したいのは、まん中に短くはさまれた一言だ。
助っ人は、ふつうの人が頼りにする、証券会社の担当者や、投資のアドバイザー、ファンドを運用するプロのことだと読める。自分で選べなくても、プロに頼めば選んでもらえる。そう考えたくなるけれど、バフェットは、そのプロにもできない、と書いている。
また、こうも書いている。長い時間をかけて少しずつ買い、悪いニュースで株価が下がっても売らない。広く分けて持ち、手数料を低くおさえる。そうすれば、何も知らない投資家でも、ほぼ確実に満足のいく結果が得られる、と。
AIは、これからもっと身近になると思う。でも、勝つ会社を当てるのは、神様でも難しい。当然、わたしにできるわけがない。だから、選ばない。勝つ会社がどこであっても、指数の中にいてくれれば、それでいい。
わたしは、オルカンとS&P500を、淡々と積み立て続ける。
5. まとめ
- アンソロピックが上場の届出書を出し、10月27日の日経平均は1,078円高。「AIは元が取れるのか」という不安に、売上の数字が出た
- 1〜6月の売上は約163億ドルで前年同期の約14倍。もとは小さいが、4〜6月だけで2025年1年分の2倍を超える
- 大口のお客さんは1年で12倍超、1年前から使っているお客さんの支払いは約9倍
- 一方で、上位5社への依存、巨額の設備契約、損失が続く見込みも、会社自身が書いている
- AIの会社は4つの層。同じ会社がライバルでも取引先でも株主でもある
- わたしは選ばない。大手テック9社はオルカンで2割超、S&P500で3割超。オルカンとS&P500を、淡々と積み立て続ける
・届出書の報道:Fortune(2026年10月26日)、Impress Watch、Forbes JAPAN
・AI株安の背景:Reuters「CoreWeave's slump puts spotlight on debt behind AI boom」
・株価:Yahoo!ファイナンスの終値
・AIの会社の景色:CNBC(SpaceXとxAIの合併)
・オルカンの中身:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」月報(2026年9月30日時点)、iShares MSCI ACWI ETFの保有銘柄一覧
・指数に入るルール:MSCI「Megacap IPOs FAQ」、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス「メガキャップ企業の扱いに関する意見募集の結果」(2026年6月4日)
・Claudeの料金:Claudeの料金ページ(2026年10月27日に確認)
・格言:Berkshire Hathaway「2013 Shareholder Letter」(訳はわたし)
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