仕事と家庭以外に、夢中になれることはある? 「第三の領域」がある人は幸福度が高い
仕事と家庭のほかに、夢中になれることはあるだろうか。
ニッセイ基礎研究所が10月15日に出したレポートによると、会社員や公務員のうち、仕事と家庭以外に夢中になれることがある人は、約半分だった。そして、そういう人ほど、幸福度が高かったという。
📊「持っている人は、どれくらい?」
💰「お金や時間の余裕と、関係はある?」
🐾「わたしの第三の領域は?」
1. 第三の領域って、なに?
アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグは、家庭でも職場でもない、気軽に集まれる場所を「サードプレイス」と呼んだ。行きつけのカフェや酒場、地域の集まりのような場所だ。
ニッセイ基礎研究所のレポートは、この考え方を参考に、仕事と家庭以外で夢中になれることやものを「第三の領域」と呼んでいる。場所に限らず、趣味や活動、人とのつながりも含む、広い考え方だ。
例えると、家と会社のほかに、もうひとつ部屋を持っているようなものだ。
レポートでは、最近はSNSなどのオンラインの空間も、サードプレイスの役割を果たしうると紹介されている。たしかに、わたしも、Xで返信をもらったり、それに答えたりしていると、会話をしているような感覚がある。つながりのかたちも、変わってきているのかもしれない。
2. 持っている人は、どれくらい?
調査は、全国の18〜64歳の会社員と公務員5,680人に、「仕事と家庭以外で、夢中になれることやものがあるか」を聞いたものだ。
「ある」が16.5%、「まあある」が35.2%で、あわせて51.7%。ほぼ半分の人が、第三の領域を持っていた。
男女の差は、ほとんどなかった。年齢では34歳以下で多く、45〜54歳で少ない。子どもがいる人は、「ある」とはっきり答えた割合が低かった。
幸福度(10点満点)でも、差が出ている。
3. お金や時間の余裕と、関係はある?
レポートでは、お金・時間・体力のどれについても、余裕がある人ほど第三の領域を持っていた。子育てや介護で忙しいと、夢中になる時間や体力をつくりにくい。
では、幸福度が高いのは、単に余裕があるからなのか。レポートは、お金・時間・体力の余裕や、仕事や家庭の満足度、年収などが同じくらいの人どうしで比べる計算もしている。それでも、第三の領域があることと、幸福度の高さには、つながりが残った。
ただし、これは「つながりがある」という結果で、第三の領域を持てば幸せになる、とまでは言っていない。
4. わたしの第三の領域は?
この調査は会社員と公務員が対象で、フリーランスのわたしは入っていない。でも、自分に当てはめて考えてみた。愛犬のごまもちとの時間は、わたしにとっては家庭のほうに入ると思う。
まず、このブログ。結構、夢中にやっていることのひとつだ。
それから、人とのつながりがある。意外に感じるかもしれないが、わたしは大学時代、サークルの部長をしていた。そのつながりで、ここ数年はサークルの同窓会の幹事としてかかわっている。つい先日も、同窓会があったばかりだ。
フリーランスになって、こうした時間は、相対的には増えた。会社にいたころは、朝から晩まで、基本は会社の仲間と過ごしていた。仕事が終わって移動して、飲み始めるのは早くても19時ぐらい。会社の外の人と会う時間は、どうしても少なくなる。
この前も、午後の予定がなかったので、友人を誘って15時ぐらいから遊んだ。4軒はしごをして、気がつけば終電。9時間ぐらい、一緒に過ごしていたことになる。単純に、自由にできる時間が増えたのも大きい。
国の調査(2021年)では、人と会ったり付き合ったりする時間は、1日平均で10分。1年にすると約61時間になる。その5年前、2016年の17分から減っている。
5. わたしの見方
人とのつながりの大切さは、健康のデータにも出ている。アメリカの研究者たちが、148の研究、約31万人分をまとめて分析したところ、人とのつながりが強い人は、弱い人よりも長生きしやすかった。生き残りやすさにすると、約1.5倍の差になる。論文に付いた編集部の解説では、その影響は喫煙や飲酒と同じくらいで、運動不足や肥満よりも大きいとしている。
およそ2,400年前、古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、『ニコマコス倫理学』の中で、友愛について、こう書いている。
友がいなければ、
だれも生きることを選ばないだろう。
アリストテレス『ニコマコス倫理学』第8巻
『ニコマコス倫理学』は、人がよく生きるとはどういうことかを考えた本だ。アリストテレスは、その第8巻を、友愛(フィリア)の話から始めている。友は、生きていくうえで、いちばん必要なものだと。
すぐあとに、こう続く。お金持ちや力のある人ほど、友を必要とする。豊かさがあっても、それを分かち合う相手がいなければ、何のためのものかわからない。豊かさを守るにも、友がいる。貧しいときや、つらいときには、友だけが逃げ場になる。
余裕がある人ほど第三の領域を持ちやすい、という調査の結果と、重なって見える。
アリストテレスは、友情を3つに分けてもいる。役に立つから続く友情、楽しいから続く友情、そして、相手の人柄そのものを好きで続く友情。いちばんよいのは3つ目だが、その友情はめったにない。そう思えるほど人柄のよい人が、少ないからだ。それに、時間もかかる。ことわざにあるように、人は「一緒に塩を食べる」まで、互いを知ることができない。友だちになりたいという気持ちはすぐに生まれても、友情はすぐには生まれない、と書いている。
アリストテレス『ニコマコス倫理学』第8巻
塩は、毎日の食事で少しずつしか口にしない。だから、たくさんの塩を一緒に食べ終えるには、何度も何度も食卓を囲むことになる。古代ローマのキケロも、友情について書いた本で、同じことわざを「本当の友になるには、たくさんの塩を一緒に食べなければならない」と紹介している。
日本でいえば「同じ釜の飯を食う」に近い。
わたしにとっての第三の領域は、ほとんどが人とのつながりだった。サークルの仲間、大学の友人、中学と高校の同級生、バーのマスター。どれも、長い時間をかけて続いてきた関係だ。もちろん、一緒に遊んでくれる友人がいることが大前提だ。大事にしたい関係だと思う。
6. まとめ
- 仕事と家庭以外に夢中になれること(第三の領域)がある会社員・公務員は51.7%。ほぼ半分
- 第三の領域がある人の幸福度は6.05点で、全体の平均5.49点を上回った
- お金・時間・体力に余裕がある人ほど、第三の領域を持っていた。余裕が同じくらいの人どうしで比べても、幸福度とのつながりは残った
- わたしの第三の領域は、このブログと、大学のサークル仲間、大学の友人との食事、中学・高校の同窓会、学生時代のバイト先のバー
- フリーランスになって、仕事と家庭以外の時間は相対的に増えた。会社にいたころは、朝から晩まで会社の仲間と過ごしていた
- アリストテレスは「ほかのよいものをすべて持っていても、友がいなければ、だれも生きることを選ばない」。お金持ちほど友を必要とする、とも書いている
・人と会う時間:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の要約」
・つながりと健康:Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB "Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review"(PLoS Medicine、2010年)
・格言:Aristotle, Nicomachean Ethics, Book VIII(英訳 W. D. Ross)(訳はわたし)
・塩のことわざ:Cicero, On Friendship(英訳 E. S. Shuckburgh、Project Gutenberg)
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