エナジードリンクは「元気のおまじない」? 広告とお金で見てみた
10月17日、TBS CROSS DIGに「エナジードリンクの日常化が招くリスク」という記事が載った。もとは、ニッセイ基礎研究所のレポートだ。
わたしは、エナジードリンクを飲まない。でも、前の会社には、毎朝飲む若手社員がいた。朝早い撮影の仕事のときに、飲んでいるという先輩もいた。
中身も気になるが、各社の広告も気になる。レッドブルは、サッカーやエクストリームスポーツなど、幅広く広告を出している。好きなスペインサッカーを見ていると、ピッチの広告にモンスターが出てくることもある。イメージが大事な商品なのだと思う。調べてみた。
1. エナジードリンクには、何が入っているの?
まずは、中身から見ていく。いちばんの主役は、カフェインだ。カフェインには、眠気を減らしたり、集中しやすくしたりする働きがある。ただ、とりすぎると、めまいや動悸、眠れなくなる、吐き気などが起きることがある。
レッドブル1本(250ml)のカフェインは、約80mg。多い商品では、1本で150mgのものもある。コーヒー1杯は、40〜180mgくらいだ(レポートによる)。厚生労働省も、1本でコーヒー2杯分にあたる製品がある、と注意を呼びかけている。
コーヒーで比べると、わかりやすい。わたしはコーヒーを毎日2、3杯飲む。コーヒー1杯(150ml)のカフェインは約90mg(日本食品標準成分表で、100mlあたり60mg)なので、1日に180〜270mgほど。レッドブルなら2〜3本分になる。大人の1日の上限の目安の400mgには届かない。
では、カフェインのほかには、何が入っているのか。レッドブル日本の公式ページによると、250mlの1本には、ビタミンB群、アルギニン(アミノ酸の一種)、約27gの糖類も入っている。
目立つのは、糖類だ。27gは、角砂糖(1個約4g)なら7個ほど。WHO(世界保健機関)は、砂糖などの糖類を、1日にとるエネルギーの10%未満に、できれば5%未満におさえるようすすめている。5%は、大人で1日25gくらいなので、レッドブル1本でその量をこえる。糖類の入っていない「シュガーフリー」の商品もある。
もうひとつ、成分表を見ていて気が付くことがある。日本の栄養ドリンクでよく聞く「タウリン」が入っていない。海外のレッドブルには入っている成分だ。
カナダのレッドブルには、1本(250ml)に1,000mgのタウリンが入っている。ところが、日本のレッドブルの原材料は、カフェイン、アルギニン、ビタミンB群、糖類などで、タウリンは入っていない。
タウリンは、アミノ酸の一種だ。イカやタコ、カキに多く、人の体の中でも作られる。1827年に牛の胆汁から見つかり、名前はギリシャ語の「牛」から来ている。
日本では、国が「専ら医薬品として使用される成分」のリストに、タウリンを入れている。ふつうの食品にリストの成分を入れると、その製品は医薬品と判断される。そのため、清涼飲料水として売るエナジードリンクには入れられない。2020年には、リストから外すかどうかが国の会議で話し合われたが、そのままになった。
一方、医薬品や、医薬品と食品のあいだにある「医薬部外品」として国に認められた商品なら、タウリンを入れられる。リポビタンDには、100mlに1,000mgのタウリンが入っている。大正製薬は戦前からタウリンを研究してきた会社だ。リポビタンDは1962年に医薬品として発売され、1999年に医薬部外品になって、コンビニでも買えるようになった。
こうした飲み物を、だれが飲んでいるのか。レポートによると、若い人ほど、よく飲んでいる。
- 10・20代の男性:約66%が飲む(マイボイスコム、2024年。オロナミンCのような栄養ドリンクの炭酸飲料もふくむ)
- 男子高校生:約8人に1人が、週に1本以上飲む(野井真吾ほか、2020年の論文)
習慣的に飲む子どもには、頭痛や吐き気などの体の症状との関係が見られた、とレポートは書いている。子どもが自分で買った1本を一気に飲んで、病院にかかった例も紹介されている。子どもは体が小さいぶん、同じ量でも影響を受けやすい。
2. 日本では、どれくらい売れているの?
エナジードリンクをふくむ「栄養ドリンク炭酸飲料」の、メーカーが売った金額は、2025年に約1,870億円だった(全国清涼飲料連合会)。この分類には、オロナミンCのような飲み物も入っている。
1人あたりで見ると、日本はアメリカの7分の1ほどしか飲んでいない。ただ、みんなが少しずつ飲んでいるわけではない。マイボイスコムの調査の回答者全体では、エナジードリンクを飲まない人が6割近くいて、飲む人の中にも、ときどき飲む人と、よく飲む人がいる。飲まない人、ときどき飲む人、よく飲む人に、はっきり分かれた市場だ、とレポートは見ている。
3. 売っているのは、何?
レッドブルの広告は、スポーツの中にある。
テレビのCMだけでなく、スポーツの場面そのものに、会社の名前を出している。F1のマシンにも、サッカーのクラブの名前にも、レッドブルが入っている。わたしがスペインサッカーで見たモンスターも、2026年に、スペインのクラブとスポンサー契約を結んでいた。
要は、こういうことだ。好きなスポーツ選手と同じシューズを買うと、少し速く走れる気がする。エナジードリンクの広告も、それに近い。飲むと、あの選手やチームのように、頑張れる気がする。中身だけでなく、その気分も一緒に売っている、というわけだ。
日本でも、「元気」は昔から売られてきた。
リポビタンDやオロナミンCが、「元気」の飲み物として広がっていった。バブルのころのリゲインの「24時間戦えますか」や、眠気覚ましの眠眠打破は、日本らしい商品ではないだろうか。
4. 毎日1本だと、1年でいくら?
お金の目線でも、見てみる。エナジードリンクは、1本230円くらいだ。
毎日1本飲むと、1年で約8万4,000円。平日だけでも、約6万円になる。
5. 投資の目線で見ると?
モンスターの株は、投資の世界でも有名だ。
モンスター・ビバレッジは、アメリカの株式市場に上場している。CNBCは2023年、2003年からの20年間のリターンが、S&P500の会社の中でいちばん高かったと報じた。1,000ドル分買っていたら、83万ドルをこえていた。約830倍という計算だ。モンスターの株価は、2003年から2005年にかけての2年ほどで、およそ18倍になっていた。そのため、どこから数えるかで、倍率は大きく変わる。
一方、レッドブルは、株式市場に上場していない。
わたしは、モンスターの株を持っていない。個別の米国株は買わず、オルカンやS&P500のような指数でまとめて持っている。モンスターは、S&P500の中の1社として、わたしの持ち物にも少しだけ入っている。S&P500の中では約0.1%、オルカンの中では約0.06%だ。1万円あたりにすると、S&P500なら約10円、オルカンなら約6円ぶんになる。
セクター(業種の分け方)では、モンスターは「生活必需品」に入り、その中でも「清涼飲料」に分けられる。S&P500の清涼飲料は4社で、コカ・コーラとペプシコが大きい。
モンスターは、清涼飲料4社の中で約1割。コカ・コーラの5分の1ほどの大きさだ。
6. わたしは、どう思う?
口にするものには、気持ちの面の意味も大きいと思っている。少し疲れているから、焼肉を食べよう。夏バテ気味だから、うなぎを食べよう。わたしも、疲れているときや、頑張ったあとには、おいしいものや、精のつくものを食べようと思う。
「ファイト!一発!」のリポビタンDや、オロナミンCも、飲むと、なんだか頑張れる。元気になれる。ちょっとした、おまじないのような効果もあるのだと思う。
angry because we strike,
afraid because we tremble
なぐるから怒り、
ふるえるから怖いのだ。
アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズが、1884年の論文「情動とは何か」に書いた一節だ。ふつうは、財産を失ったから悲しくて泣く、熊に会ったから怖くて逃げる、と考える。ジェームズは、その順番は逆だと言った。体が先に動き、気持ちはあとからついてくる。のちに「笑うから楽しくなる」という言い方で、広く知られるようになった。
人間は、行動することで前向きになれたり、やる気のスイッチを入れたりできる、という話を聞いたことがある。エナジードリンクを飲むことが、その行動のひとつになるのなら、悪い投資ではないのかもしれない。ただし、適切な量で。
7. まとめ
- エナジードリンク1本のカフェインは、レッドブル(250ml)で約80mg、多いものは150mg。大人の1日の上限の目安は400mg
- 日本の1人あたりの消費量は、アメリカの7分の1ほど。でも、10・20代の男性では、飲む人が多い
- 売っているのは中身だけでなく、「頑張れる自分」のイメージ。レッドブルはF1やサッカー、モンスターはスペインのクラブにお金を出している
- 1本230円で毎日飲むと、1年で約8万4,000円になる
- モンスター・ビバレッジの株は、20年でS&P500の中でいちばん上がったと報じられた。モンスターは、S&P500の中の約0.1%、オルカンの中の約0.06%を占める
- 口にするものには、気持ちの面の意味も大きい。やる気のスイッチになるのなら、自分への投資として、悪くないのかもしれない。ただし、適切な量で
・ニッセイ基礎研究所:廣瀬涼「若年層におけるエナジードリンクの摂取実態 前編」(2026年10月8日)
・カフェイン:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」、カナダ保健省、レッドブル日本、サントリー(HYPER ZONe ENERGY 400ml)
・成分:レッドブル日本(成分)、WHO「Guideline: sugars intake for adults and children」(2015年)、文部科学省「日本食品標準成分表」
・タウリン:専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト(東京都の掲載)、厚生労働省(2020年7月の会議)、大正製薬(タウリンとは)、大正製薬(リポビタンDの年表)、レッドブル・カナダ、レッドブル日本(原材料)
・飲む人の割合:マイボイスコム「エナジードリンクに関するアンケート調査(第6回)」、野井真吾ほか(学校保健研究、2020年)
・市場:全国清涼飲料連合会「清涼飲料水統計2026」、モンスター・ビバレッジの投資家向け資料(2025年12月)
・レッドブル:会社の紹介、trend.(マーケティング費の報道)
・モンスター:年次報告書(2025年度)、ベティス、アスレティック・ビルバオ、バレンシア、レガネス、CNBC(2023年11月8日)
・日本の歴史:大正製薬(リポビタンD)、大塚製薬(オロナミンC)、ウォーカープラス(2023年8月18日)、薬事日報(リゲイン)、薬事日報(眠眠打破)
・モンスターの割合:SPDR S&P 500 ETF(SPY)の中身(2026年10月15日)、MSCI ACWIのファクトシート(アメリカの割合64.21%、2026年9月30日)。オルカンの割合は、この2つをかけ合わせたわたしの推計
・値段:レッドブル(価格改定のお知らせ)、アサヒ飲料(モンスターエナジー)
・格言:William James, What is an Emotion?(Mind, 1884年)。日本語は、原文の意味をわかりやすく訳したもの
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