元契約者が読む、プルデンシャル生命の不祥事。気をつけるのは「保険以外のお金の話」
2026年1月16日、プルデンシャル生命が、社員と元社員の不正を公表した。106人が、498人のお客さんから計30.8億円を受け取っていたという。保険とは関係のない投資話を持ちかけたり、個人的にお金を借りたりしたものだ。社長は2月1日に交代し、新しい契約の販売は、2月9日から原則として自粛が続いている。
ここで、いくつか疑問がわいてくる。
🤔「なんで、こんなに長く見つからなかったの?」
😮「保険の営業の人と、どう付き合えばいいの?」
結論から言うと、今回の不正の大半は、保険の契約そのものではなく、社員や元社員が個人として持ちかけた投資話や借金だった。会社は、すでにある契約や保険金の支払いは、これまでどおり続けると説明している。なぜ起きたのかについて、会社は自分で「業績に過度に連動する報酬制度」などを挙げた。契約している人が気をつけることは、ひとつに絞れる。保険と関係のないお金の話には、応じない。
わたしは社会人になってすぐこの会社の保険に入り、2021年に解約した。解約は、不祥事が明らかになるずっと前で、理由も別だ。この記事は、担当してくれた方や、ほかの社員の方を責めるためのものではない。会社の発表を、順番に読んでいく。
1. 何が起きたのか
会社は2024年8月から、契約している人などに手紙やメール、電話で、社員による不審なお金の扱いがなかったかを確かめてきた。手紙だけで約209万通になる。その結果を、2026年1月16日に公表した。
たとえば公表された事案の1つでは、元社員が「社員しか買えない株があり、絶対利益が出て元金は保証するからお金を預けてくれないか」と持ちかけ、お金を受け取っていた。会社の社員持株制度の名前を使った話だ。会社の名前が入った書類を使った例もある。
もう1つ目を引くのは、受け取ったお金の半分近く(14.5億円)が、会社を辞めたあとに受け取ったものだったことだ。辞めた元社員からのお金の話にも、同じように気をつけたい。
2. ここ数年の、主な出来事
1月の公表は、突然出てきた話ではない。2024年から、元社員の逮捕や公表が続いていた。そして公表のあとも、新しい事案が出ている。
報道によると、金融庁は今年4月の時点で会社に検査に入っており、親会社にも検査に入る方針を固めた。販売の自粛は、11月に解いて営業を再開する予定とも報じられているが、会社はまだ発表していない。補償と仕組みの作り直しがどう進むかは、会社のこれからの発表で見ていける。
3. なぜ起き、なぜ長く見つからなかったのか
会社は1月16日の発表で、不正を招いた原因を自分で説明している。わたしなりに分けると3つだ。
1つ目は、営業社員の活動を、管理職が十分に見ていなかったこと。営業社員とお客さんの間に近い関係ができるなかで、本社のチェックも働かず、おかしな動きに十分に気づけなかった。
2つ目は、報酬の仕組みだ。会社の言葉をそのまま載せる。「業績に過度に連動する報酬制度は、金銭的利益を重視する志向を持つ人材を惹き付け、営業社員の収入の不安定さが不適切行為につながるリスクを増大させていました」。収入が不安定なことから、お客さんにお金を借りた例もあったという。
3つ目は、経営が、創業以来のやり方を疑わなかったこと。発表には「創業以来のビジネスモデルを所与のものと捉える経営姿勢」があり、抜本的に変えることをためらう組織風土ができていた、とある。
ここで分けておきたいことがある。不正が公表されたのは、一部の社員と元社員だ。営業社員みんながそうだったわけではない。一方で会社は、個人の問題だけではなく、仕組みにリスクがあったと認めている。4月には、自粛を延ばす理由として、経営や支社の体制にも「本質的な課題」を追加で見つけたと説明した。
4. 契約している人は、何に気をつければいいか
いちばん具体的なのは、会社自身の呼びかけだ。8月24日の発表で、会社は、社員や元社員から次のような話を受けたことがある人に、連絡を求めている。
逆に言えば、保険の営業の人から、保険以外のお金の話が出たら、そこで止めていい。プルデンシャル生命は、会社名義以外の口座への振り込みや、現金の手渡しを「不審な金銭取り扱い」の例に挙げている。現金は2005年から預かっていないという。どれだけ仲のいい相手でも、ここは分けて考えたほうがいい。
すでに契約している保険は、会社の説明では、保障も保険金の支払いもこれまでどおり続く。だから、今回のニュースそのものは、解約する理由にはならない。
5. わたしの場合
社会人になったばかりのころ、よく行く飲み屋で顔を合わせるうちに、仲よくなった男性がいた。明るくて元気で、とにかく感じのいい人だった。個人的に会うことはなかったけれど、飲み仲間どうしでバーベキューをしたり、フットサルをしたりする、そんな間柄だ。その人が、プルデンシャルの営業の方だった。
営業のために近づいてきた、という関係ではない。保険のことを最初に相談したのは、わたしのほうからだ。無理にすすめられたわけでもないので、担当してくれた方に、恨みのようなものは何もない。そうして入ったのが、外貨建ての終身保険だった。
わたしには、保険でお金を増やそうと考えていた時期があった。でも、リベ大の両学長の発信に出会い、お金のことを勉強するうちに、保険は保険、貯蓄や投資は別という考えに変わる。2021年3月に解約したのは、そのためだ。保険料は、毎月5万円と、年末に50万円ほど。7年ほど払い続けて、解約で戻ってきたのは約700万円だった。きちんと計算したわけではないが、元本を100万円ほど割った印象だ。ただ、保険料には万一のときの保障のぶんも入っていたので、差がまるごと損というわけではない。
同じお金を、ふつうにオルカンに積み立てていたら、と思うことはある。一方で、毎月保険料を払い続けたことで、決まった額を積み立てる習慣がついた。それは、いまのNISAの積立につながっている。
いまは、どの会社の保険でも、貯蓄型は基本的に解約していいと思っている。保険として残すなら、必要な分だけの掛け捨てにする。
ただ、解約するなら順番がある。必要な保障があるなら、先に掛け捨ての保険に入れることを確かめてから解約する。年齢や健康状態によっては、新しく入れないこともあるからだ。解約で戻るお金が払った額より少ないこともあるので、戻る額も先に確かめておきたい。
6. お金を扱う会社にとって、いちばん大事なもの
お金を扱う会社にとって、何がいちばん大事なのか。1991年にアメリカで起きた事件のときに、バフェットが残した言葉がある。
会社の評判をひとかけらでも失ったら、容赦はしない
ウォーレン・バフェット(1991年、アメリカ議会での証言)
1991年2月、アメリカの証券会社ソロモン・ブラザーズで、国債の担当者が入札で不正をした。1社が買える量は35%までと決まっていたのに、客の名前を勝手に使って申し込み、57%を手に入れたのだ。
経営陣は、この不正を知ってからも、当局への報告を数か月遅らせた。それが分かった8月、会長と社長は辞任し、大株主だったバフェットが暫定の会長を引き受けた。その2日後、国は一時、ソロモンを国債の入札から締め出すと決め、会社は存続が危うくなる。バフェットが国に掛け合い、締め出しは一部撤回された。
9月4日、バフェットは議会に呼ばれて証言した。国が決めたルールや法律は守られて当然だ、と認めたうえで、会長として社員全員に何を求めたかを説明している。それが、この言葉だ。会社のお金の損なら大目に見る。でも、会社の信用を少しでも傷つけたら許さない、という意味になる。事件は、1992年に決着した。ソロモンが払ったのは合わせて2億9,000万ドルで、国への罰金などが1億9,000万ドル、被害を受けた人への補償が1億ドル。
プルデンシャル生命でも、会社の信用を大きく傷つけるきっかけは、一部の社員と元社員の行いだった。その代償は、会社がこれから払っていくことになる。すでに4〜6月の新契約高は92.8%減った。販売の自粛は、延長を合わせて270日に及ぶ予定だ。お金の損は、補償という形で返していける。でも、失った信用を取り戻すには、もっと長い時間がかかる。バフェットが、信用の損にだけは容赦しないと言ったのは、そのためだと思う。
わたしにできるのは、保険と投資を分けて考え、保険以外のお金の話には乗らないこと。保険会社、銀行、証券会社のどこの担当の人でも、親戚でも友人でも、会社を通さないお金の話や、少しでも怪しいと感じる話が出たら、そこで関係は終わりだ。自分の身は、自分で守るしかない。
7. まとめ
- プルデンシャル生命の社員・元社員106人が、498人から計30.8億円を受け取っていた(1月16日公表)。大半は保険と関係のない投資話や借金
- 2024年の元社員の逮捕から、9月の個人情報の持ち出しの公表や、元社員の逮捕の報道まで、事案が続いている。販売は2月から原則自粛、4〜6月の新契約高は92.8%減
- 会社は原因として、管理の不十分さ、業績に過度に連動する報酬制度、創業以来のやり方を疑わない経営を挙げた
- すでにある契約と保険金の支払いは、これまでどおり続くと会社は説明している
- 気をつけることは、保険と関係のないお金の話に応じないこと。相手が親戚や友人でも、会社を通さないお金の話が出たら、そこで終わりにする
- ニュースそのものは解約の理由にならない。わたしは、どの会社でも貯蓄型の保険は基本的に解約、保険は必要な分の掛け捨てだけ、という考え
・販売の自粛:「新規契約の販売活動を90日間自粛」(2月4日)、「自粛期間を180日間延長」(4月22日)
・調査委員会と補償委員会:「第三者委員会の設置について」、「お客さま補償委員会について」(2月10日)
・補償の進み具合:4月22日、7月24日の「お客さまへの補償の進捗状況について」
・新しい疑いと、会社が連絡を求めている話:「弊社多摩支社の営業社員による不適切な金銭受領事案について」(8月24日)
・新規契約の減少と解約:「2026年度第1四半期業績報告」(8月27日)
・金融庁の検査:時事ドットコム(4月10日)
・2024年6月の元社員の逮捕:プルデンシャル生命「弊社元社員の逮捕について」(2024年6月7日)
・2024年9月の汐留支社の元社員の逮捕:プルデンシャル生命「弊社元社員の逮捕について」(2024年9月12日)
・2025年4月の報告徴求命令:東洋経済オンライン(2025年4月10日)
・個人情報の持ち出しと紛失:プルデンシャル生命「弊社元営業社員によるお客さまの個人情報の漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年9月14日)
・9月24日の元社員の逮捕と、同僚を誘ったとみられること:日テレNEWS NNN(9月24日)、文春オンライン(9月25日)。11月の営業再開の予定も文春オンラインの報道
・会社名義以外の口座への振り込みや現金の手渡し、現金を2005年から預かっていないこと:プルデンシャル生命「不審な金銭取り扱い等に関する確認」
・わたしの保険:4月の最初の記事
・バフェットの言葉:1991年9月4日、アメリカ下院の小委員会での証言(ソロモン・ブラザーズの国債入札不正について)。原文は証言の冒頭陳述(「The nation has a right to expect its rules and laws to be obeyed.」も同じ証言)。訳はわたし
・ソロモン・ブラザーズの事件(35%の上限と57%、報告の遅れ、会長らの辞任):Wikipedia「John Gutfreund」、UPI(1993年1月7日)、The Washington Post(1991年8月17日)。バフェットが暫定会長を引き受けた日(8月16日)、2日後の締め出しと一部撤回はFortune(Carol J. Loomis「Warren Buffett's Wild Ride at Salomon」1997年)。2億9,000万ドルの決着(国に1億9,000万ドル、補償に1億ドル)はアメリカ司法省(1992年5月20日)




