ビットコイン保有のストラテジーが除外⁉︎ MSCIの新ルールとは
10月16日の日本経済新聞に、「MSCI、世界株指数に新ルール」という見出しが載った。
MSCIは、わたしがNISAで積み立てているオルカンが、お手本にしている指数を作っている会社だ。その指数から、ビットコインをたくさん持つ会社を外すという。
わたしは、ビットコインを0.1BTC持っている。でも、ストラテジーやメタプラネットの株は持っていない。オルカンの中で、何が起きるのか。調べてみた。
1. 何が決まったの?
MSCIは、世界中の株の指数を作っている会社だ。オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)は、MSCIの「ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」という指数と同じ動きをめざしている。ACWIには、大きな会社と中くらいの会社が入る。MSCIは、そのほかに、小さな会社の指数なども作っている。
今回MSCIは、「事業をしていない会社」は、株の指数に入れないと決めた。もともと投資信託などのファンドは、指数に入れていない。それに加えて、会社の形をしていても、中身がファンドに近い会社も、同じ扱いにする。対象は、小さな会社の指数もふくむ、MSCIの株の指数すべてだ。
いきなり決まったわけではない。1年かけて、話し合ってきた結果だ。
2. 会社なのに、中身はビットコイン?
ビットコインなどの暗号資産を、会社のお金でたくさん買って持つ会社がある。「DAT企業(デジタル・アセット・トレジャリー企業)」と呼ばれる。代表が、アメリカのストラテジーと、日本のメタプラネットだ。
株を買う人から見ると、この2社の株を買うことは、ビットコインを間接的に持つことに近い。
要は、こういうことだ。ビットコインがたくさん入った、「会社」の形をした貯金箱を、株として売っている。貯金箱の中身の値打ちが上がれば、株も上がりやすい、というわけだ。
おもしろいのは、貯金箱の値段が、中身の値打ちとぴったり同じではないことだ。ここでいう貯金箱の値段(会社の値段)は、株の値段の合計(時価総額)に、会社の借金などを足し、手元の現金を引いたものだ。「企業価値」と呼ばれる。
ストラテジーは、中身より高く売られている。メタプラネットは、中身より安く売られている。中身が1万円の貯金箱が、8,800円で売られているようなものだ。
MSCIは、こうした会社を「資産をためて持つことで価値を生む」「事業から生むお金が少ない」と見ている。株の指数は、事業をしている会社の集まりであるべきだ、という線引きだ。
一方、ストラテジーは8月末にMSCIに書簡を送り、「事業をしている・していないの区別は、会計の基準にない」「差別的で、恣意的だ」と反対していた(The Blockの報道)。
3. わたしのオルカンから、何が抜けるの?
答えは、ほとんど何も変わらない、だ。
ストラテジーは、オルカンの中の約0.04%。オルカンを1万円持っていたら、そのうちの約4円ぶんだ。メタプラネットは会社の規模が小さいので、もともとオルカンの指数に入っていない。
S&P500はどうか。ストラテジーは、S&P500にもともと入っていない。日本のTOPIXは、ビットコインなどが主な財産の会社を、新しく入れないと決めている。ただ、今入っている会社は外さない(JPX総研、2026年7月)。
わたしは、勝手に入れ替わって最適化されるのは、オルカンなどインデックス投資のよさだと思っている。S&P500もそうだ。スペースXが上場したときも、いつ指数に入るのかを調べて記事にした。入るのも、出るのも、指数が決めてくれる。
4. 外れると、株価は下がるの?
オルカンのような投資信託は、運用会社が、指数と同じ中身になるように株を売り買いしている。わたしたちが何もしなくても中身が入れ替わるのは、このためだ。指数から外れた会社の株は、世界中のこうした投資信託や、年金を運用する機関が、指数に反映される日に合わせて、いっせいに売る。日本の公的年金を運用するGPIF(大きすぎて「クジラ」と呼ばれる)も、外国株ではMSCIの指数(日本をのぞくACWI)を目安にしている。売りがいっぺんに出るので、株価は下がりやすい。
JPモルガンは2025年11月、ストラテジーがMSCIの指数から外れると、約28億ドル(4,400億円ほど)が流れ出る、と試算していた(CoinDeskの報道)。ただ、これは前の案のときの数字で、今の案での試算はまだ見当たらない。
もうひとつ、今回は、外れた会社の受け皿になる指数がない。
要は、S&P500から外れるのは、1部リーグから2部リーグに移るようなものだ。今回のMSCIのルールは、リーグそのものから外れる。
9月のS&P500の入れ替えでは、外れた3社の株価は、発表から1か月で9〜17%下がった。同じ1か月、S&P500全体はほぼ横ばいだった。
ところが、今回は少しちがう動きも出ている。発表を受けた10月16日の東京の取引で、メタプラネットの株価は、東証で前の日より4.5%高い277円で終わった。ストラテジーは、アメリカの取引が始まる前の時間で、2〜3%ほど安い。
話し合いは1年前から続いていた。外れることは、ある程度、株価にふくまれていたのかもしれない。
5. わたしは、どう思う?
なんかわかる、と思った。ビットコインを運用しているだけなら、株を買う人が、ビットコインを直接持てばいいと思う。わたしも、会社の株ではなく、ビットコインそのものを0.1BTC持っている。
でも、指数には、もともと判断の基準がある。会社の値段が下がれば、指数の中の割合は小さくなり、やがて外れる。それなら、別に追い出さなくてもいい気がする。ルールは、少なくてシンプルなほうが、わたしは好きだ。
盗賊多く有り。
中国の春秋時代の思想家とされる、老子の言葉だ。『老子』は、国の治め方や生き方を、短い言葉で説いた書物。この章で老子は、上に立つ人が禁止や決まりを増やすほど、人々はかえって貧しくなり、法律を細かくするほど、盗みが増える、と述べている。決まりを足すより、余計なことをしないほうが、世の中は自然とよくなる、という考えだ。
もちろん、MSCIのルールが悪いことを生む、という話ではない。指数を作る会社には、指数を作る会社の考えがある。
そして、外れても、外れなくても、わたしがオルカンに積み立てを続けることは変わらない。ただ、ルールを増やさなくても、抜けるべきものは抜けて、入るべきものは入る、そう思っただけだ。
6. まとめ
- MSCIは、事業をほとんどせず、ビットコインなどを持つだけの会社を、11月30日の取引の終わりで、株の指数から外すと決めた
- ストラテジーやメタプラネットなど5社が外れそう。2社とも、会社の中身はほとんどビットコインだ。最終リストは11月11日に出る
- ストラテジーはオルカンの約0.04%(1万円で約4円)。メタプラネットは、もともとオルカンに入っていない
- S&P500から外れたときとちがい、MSCIの中に受け皿の指数はない。指数に合わせて運用するお金の売りが出やすい
- 発表を受けた16日、メタプラネットの株価は上がった。外れることは、ある程度、株価にふくまれていたのかもしれない
- 理由はわかる。でも、別に追い出さなくてもいい気がする。ルールは少なくてシンプルなほうが好き
・MSCIの発表:結果の発表(2026年10月15日)、意見募集の資料(2026年8月)、影響を受けそうな銘柄のリスト、MSCI ACWIのファクトシート
・MSCIのこれまでの発表:2025年9月12日、2025年10月10日、2026年1月6日、2026年8月3日
・GPIF:外国株式のベンチマーク(GPIFのサイト)
・TOPIX:JPX総研(2026年7月21日)
・各社のビットコイン:ストラテジー、メタプラネット
・ストラテジーの反論:The Block(2026年9月1日)
・売りの試算:CoinDesk(JPモルガンの試算、2025年11月20日)
・株価:Yahoo Financeの値から(メタプラネットは10月16日の東証の終値、ストラテジーは米国時間10月16日の取引前の値)
・格言:老子『老子』第五十七章




