「クラリティ法案」とは何か。ビットコインとの関係を調べてみた
9月21日、ビットコインが一時8万7,000ドル台(約1,370万円)まで上がった。6日前の9月15日には7万5,000ドルを割っていたので、1割以上の上げだ。ニュースは、アメリカの当局が暗号資産(ビットコインのように、国や銀行を通さずにやり取りできる電子のお金)の制度を整え始めたことへの期待を、理由のひとつに挙げていた。その制度の中心にあるのが、クラリティ法案という、アメリカの暗号資産の法律だ。こう思った人も、いるはずだ。
🤔「法律ができると、なんでビットコインが上がるの?」
😤「アメリカの法律が、日本のわたしに関係あるの?」
🏠「日本はどうなってるの?」
わたしは、数年前に20万円で買った0.1BTC(ビットコイン0.1枚)を持っている。資産の2%ほどの、増えても減っても生活に響かない「お遊び枠」だ。7月の記事で、税金の理由から「2028年まで売らない」と決めた。だから、この法案が何なのかを調べた。
結論から言うと、クラリティ法案は、暗号資産を3つに分けて、それぞれを見張る役所を決める法律だ。この法律が通れば、ビットコインは「誰も支配していない」側に入り、原油や金と同じ「商品」として扱われることになる。ただ、2025年7月にアメリカの国会の片方(下院)を通ったあと、もう片方(上院)で1年以上止まっている。9月15日には、審議を始めるかどうかの採決すら通らなかった。そして調べて分かったのは、日本は今年7月に、同じ趣旨の法律をもう成立させていたということ。わたしが「2028年まで売らない」と決めた、その2028年という年は、この法律から来ている。順番に見ていく。
1. 何を決める法律か。暗号資産を3つに分ける
いまのアメリカには、「暗号資産は誰が見張るのか」を決めた法律がない。株なら証券取引委員会(SEC。株の市場を見張る役所)、原油や金なら商品先物取引委員会(CFTC。商品の市場を見張る役所)と決まっているけれど、暗号資産はどちらの担当なのかが、はっきりしていなかった。SECが「これは株と同じだ」と言って暗号資産の取引所を訴え、取引所が「違う」と争う、ということが何年も続いていた。以下、株の役所をSEC、商品の役所をCFTCと書く。
クラリティ法案は、それを法律で決める。
「誰も支配していない」かどうかの目安も、法案に書いてある。1つの組織が、その暗号資産の発行量や、仕組みを変える権限の20%以上を持っていないこと。仕組みが実際に動いていて、作った人が勝手に変更できないこと。この条件を満たした暗号資産は、②の「証券」から①の「商品」へ移れる。
このほかに、ステーブルコインに利息を付けることの制限、ソフトウェアを作っただけの開発者を業者登録の対象から外すこと、中央銀行がデジタル通貨を個人向けに出すことの禁止、が入っている。
1つ目の声への答えは、「暗号資産を株か商品かに分けて、見張る役所を決める法律」だ。
2. なぜビットコインに効くのか
2つ目の声。法律ができると、なぜビットコインが上がると期待されるのか。
ビットコインは、①の条件にきれいに当てはまる。1つの組織が20%以上を持っていないし、作った人が誰なのかも分かっていない。だから法案が通れば、ビットコインは「証券ではなく商品」と法律で決まる。
効くと言われている理由は、大きなお金が入りやすくなる、という期待だ。年金基金や保険会社のような、人のお金を預かって運用する組織は、法律で扱いがはっきりしていないものを、内部のルールで買えないことが多い。担当の役所が決まり、取引所への規制が決まれば、そのお金が入ってくると見られている。
ただ、9月21日の上げについて、当日の記録を見ると、いちばん大きかったのは法案ではなかった。原油の値下がり(物価の心配が減り、株などにお金が向かいやすくなる)と、ビットコインの値下がりに賭けていた人たちの買い戻しだ。値下がりに賭ける取引は、値段が上がると損が膨らむので、一定のところで取引所が強制的に買い戻させる。この日は1時間で約3億ドルぶんが買い戻され、それが値段をさらに押し上げた。法案が通ったわけではない。むしろ、成立する見込みは下がっている。
つまり、法案が通って上がったのではない。原油や強制決済のような別の材料に加えて、「役所が動き始めた」「議員がまだあきらめていない」という、通る前の期待も乗っている。それが今回の上げだ。
3. なぜ、1年以上通らないのか
アメリカの国会は、日本の衆議院と参議院のように、下院と上院の2つでできている。法案は、2025年7月17日に下院を294対134で通っている。法案を推している共和党だけでなく、民主党からも78人が賛成した。それが上院で止まっている理由は、大きく2つある。
11月には、議員を選び直す中間選挙がある。アメリカでは、来年1月に新しい議会が始まると、通らなかった法案は最初からやり直しになる。予測市場の6〜8%という数字は、そういう見方を映している。
3つ目の声、「アメリカの法律が、日本のわたしに関係あるの?」。ビットコインの値段は世界で1つなので、アメリカの大きなお金が入るかどうかは、日本で持っている人の値段にも効く。その意味では、関係がある。でも、もっと直接に関係があるのは、次の章のほうだ。
4. 日本は、もう決めていた
4つ目の声、「日本はどうなってるの?」。
日本では、2026年7月15日に、暗号資産を金融商品取引法の中に入れる法律の改正が成立している。金融商品取引法は、株や投資信託を扱う会社を縛っている法律だ。これまで暗号資産は、お金の送金や決済のための法律(資金決済法)で扱われていた。それを「支払いの手段」ではなく「投資の対象」として、株と同じ法律の下に移した。
アメリカの法案が「株か商品かを分けて、役所を決める」なのに対して、日本は「株と同じ法律の中に、別枠で入れる」という形だ。やり方は違うけれど、「暗号資産を投資の対象として、法律の下に置く」という向きは同じ。
7月の記事で、いま売ると利益が給料などと合算されて税率が最大約55%、2028年1月以降なら利益だけ別に計算して20.315%、だから2028年まで待つ、と書いた。20.315%は、オルカンや株の利益にかかる税率と同じだ。あのとき「20.315%が使えるのは、金融商品取引法の改正が施行された翌年から」とも書いた。その改正法が、7月15日に成立していた。
5. わたしの0.1BTCは、どうするか
20万円で買った0.1BTCは、9月21日の値段(8万6,426ドル、1ドル157円)で約136万円になっている。7月に「売らない」と書いたときは99万円だったので、この2か月半で37万円増えたことになる。そのあいだ、わたしは何もしていない。買い足してもいないし、売ってもいない。値段が動いただけだ。
9月15日に否決されて下がり、17日に役所が動いて戻した。21日の上げは、原油安と強制決済が主だった。法案そのものは、1年以上どこにも進んでいない
2028年1月から、売った利益にかかる税金が20.315%になる。これを決めているのは日本の法律で、アメリカの法案がどうなっても動かない
ルイス・ブランダイス(アメリカの法律家、1913年)
のちに最高裁判事になる法律家が、100年以上前に書いた言葉だ。会社や銀行のお金の動きを、隠さずに公開させること。それが不正をいちばん防ぐ、という意味で使われた。日本の改正法が入れた「情報公開の義務」と「インサイダー取引の禁止」は、まさにこの考え方だ。
法律ができれば値段が上がる、とは思わない。わたしは、日本の法律が決めた2028年1月まで、0.1BTCを持ったままでいるつもりだ。アメリカの法案が通るかどうか、そのときに値段がどうなっているかは、分からない。分からないことは考えない。
ビットコインは資産の2%のお遊び枠。主軸のオルカンの積立も、BND(米国債券ETF)も、日本の高配当株119銘柄も、8年以上SBI証券の口座です。
SBI証券の公式サイトを見る →6. まとめ
- クラリティ法案は、暗号資産を「商品」「証券」「ステーブルコイン」の3つに分けて、見張る役所を決めるアメリカの法律。通れば、ビットコインは「商品」でCFTCの担当になる
- 2025年7月に下院を294対134で通過。でも上院では、審議を始めるかどうかの採決(60票が要る)が9月15日に49対50で否決。もめているのは大統領の倫理規定など
- 9月21日の一時8万7,000ドル台は、法案が通ったからではない。原油安と強制決済、役所の動きへの期待で動いた。年内成立の見込みは6〜8%
- 日本は2026年7月15日に、暗号資産を金融商品取引法に入れる改正法を成立ずみ。インサイダー規制、情報公開、業者規制が入る
- わたしの0.1BTCは約136万円(買値20万円)。関係があるのは、2028年1月から税金が20.315%になる日本のルール。アメリカの法案がどうなっても動かない
・上院の採決と倫理規定:あたらしい経済「クラリティ法案の審議入りならず、ビットコインは一時7.5万ドル割れ」(Yahoo!ニュース、9月16日)、Forbes JAPAN「暗号資産で巨額収入のトランプ、クラリティ法案の倫理規制で譲歩」
・値動きと理由:CoinDesk(9月21日)、CoinDesk「CFTC sends crypto rules to White House」(9月18日)、CoinPost「ビットコイン急騰、8万ドル台回復 SEC・CFTCの制度整備を好感」(9月19日)。ドル建ての値段はYahoo Finance(BTC-USD)の9月21日終値86,426ドル(世界標準時)、円換算は1ドル157円
・日本の改正法:長島・大野・常松法律事務所「暗号資産に係る規制・税制の改正の内容(1)」(2026年4月24日)、投信まるごとニュース「金融商品取引法等改正法が成立」(7月15日)、参議院 議案情報(7月15日可決、7月23日公布)。分離課税は7月3日の記事
・ブランダイスの言葉:Louis D. Brandeis "What Publicity Can Do"(Harper's Weekly、1913年12月20日。のちに"Other People's Money"に収録)。訳はわたし
・0.1BTCの約136万円はクロちゃん(わたしが使っているAI、Claude)に計算してもらった目安




