「若者は免許を取らない」「車は贅沢品」。ゴールド免許のペーパードライバーが、東京と十勝の車とお金、ロボタクシーの未来を考えてみた
9月27日の日本経済新聞に、車にまつわる記事が2本並んだ。1本は、若い人の免許離れの記事だ。見出しは「若者『車免許いらない』」。教習所に通うのは、これから高齢者と外国人が中心になっていくという。約50万円の貯金があっても、近くに教習所がなく、免許を諦めた23歳の男性も紹介されていた。
もう1本は、自動運転の記事だ。自動運転のソフトを作るティアフォーの創業者は、自動運転のよさをこう話している。
システムは眠気や疲労、イライラと無縁で、よそ見もしない
東京では車に乗らないわたしも、生まれ育った北海道の十勝に帰れば、車が欠かせない。2本を並べて読むと、気になることが出てくる。
🤔「車って、そんなにお金がかかるの?」
😤「ロボタクシーには、いつ乗れるの?」
🏠「地方の暮らしは、どう変わるの?」
結論から言うと、若い人で免許を持つ人の割合は、この10年でほとんど変わっていない。減っているのは、1世帯あたりの車の数のほうだ。東京では1世帯あたり0.4台で、車がなくても暮らせる街になっている。運転手のいないタクシー(ロボタクシー)が広がれば、車を持たない暮らしは、さらに加速しそうだ。一方で、地方では車がないと暮らせない。自分から免許を返したくても返せない高齢者にとって、ロボタクシーは救いになると思う。順番に見ていく。
1. 若い人は、本当に免許を取らなくなったのか
1つ目の声、「若い人は、本当に免許を取らなくなったの?」。警察庁の統計で確かめてみた。
免許を持つ20〜24歳は、10年で約37万人減った。ただ、同じ年代の人口で割った割合は、80.7%から78.6%と、ほとんど変わっていない。免許を持つ人が減ったのは、若い人の数そのものが減ったからだ。
教習所を卒業する人も、30年ほど前(1992年)の約255万人から、2025年は約150万人と、4割ほど減っている。若い人が減れば、教習所に通う人も減る。日経の記事が伝える教習所の変化も、その流れだ。
ちなみに、免許を取るのにかかるお金は、東京23区で約33万5,000円(オートマ車に限った免許で、教習所を卒業するまで。総務省「小売物価統計調査」、2026年8月)。
2. 車は、贅沢品になったのか
2つ目の声、「車って、そんなにお金がかかるの?」。
わたしは、車が贅沢品になっている、という印象を持っている。駐車料金なども含めると、普通のサラリーマンには負担が大きい。そして、それは免許離れや車離れとも関係していると思う。
数字を見ると、減っているのは、免許を持つ人の割合より、1世帯あたりの車の数のほうだった。
1世帯あたりの車は、全国の平均でほぼ1台だ。ただ、どの家にも1台ずつあるわけではない。東京のように車を持たない世帯が多い地域もあれば、福井(1.65台)のように、一家に2台、3台ある地域もある。
東京は0.40台で、10年前の0.45台から、さらに減っている。電車やバスが網の目のように走っていて、車がなくても困らない。
車にかかる支出は、1世帯あたりで見ると、東京23区は月に約1万8,000円と、表の中でいちばん少ない。ただ、東京が安く見えるのは、車を持たない世帯が多いからだ。1台あたりにならすと、東京は月に約4万6,000円で、北海道の約3万1,000円より高い。駐車場代も同じようにならすと、北海道の3〜4倍になる。東京で車を持つのは、やはり贅沢だ。
一方で、都市の大きさで分けると、1世帯あたりでいちばんお金を使っているのは小さな市や町村で、1か月に約3万8,000円と、東京23区の2倍ほどになる。内閣府の別の調査で車の数を比べても、人口5万人未満の市町村は、東京23区などの大都市の2倍を超える(100世帯あたり約161台と約74台)。地方では、車は贅沢品ではなく、生活必需品だ。
残クレ(最後にまとめて払う分を残して、月々を安くするローン)の記事では、300万円の車を、月々ではなく全部でいくら払うかで考えた。車を持つかどうかも、同じだ。車は、買って終わりではない。駐車場、保険、車検、ガソリンと、維持費が毎月、毎年かかってくる。あたりまえだが、結構重要なことだと思う。車の値段に維持費まで足した総額で見ると、東京で車を持たない選択は、ずいぶん合理的に見える。
3. ロボタクシーは、どこまで来たのか
3つ目の声、「ロボタクシーには、いつ乗れるの?」。
日本全体では、国の目標の50か所に対して、まだ9か所。十勝の上士幌町は、そのひとつだ。
安全の面でも、期待は大きい。日本で起きた死亡事故のうち、約96%は運転する人の違反が原因だった(2024年、警察庁のデータ)。Waymoは、人が運転する場合と比べて、重いけがにつながる事故が95%少ないと発表している。ティアフォーの創業者の「眠気や疲労、イライラと無縁」という言葉は、この数字とつながっている。
4. 十勝のわたしと、免許を返せない人
4つ目の声、「地方の暮らしは、どう変わるの?」。
わたしは、いずれ十勝に帰るつもりでいる。そのことは、十勝計画の記事にも書いてきた。十勝では、車がないと暮らせない。実家には車が2台あって、1台はほとんど使われていない。帰ったら、そのどちらかを使う予定だ。
ただ、本当は全自動の車、つまり自動運転の車で動きたい。運転に不安があるからだ。とくに気になっているのが、雪道の運転だ。冬の十勝の道は、凍ってつるつるのアイスバーンになる。地元の人でも、細心の注意が必要になるほどだ。自動運転が雪道にも対応してくれるなら、非常にうれしい。
雪道の自動運転は、まだ実験の段階だ。それでも、十勝では上士幌町が冬もバスを走らせ、帯広市でもこの前の冬に試している。
わたしの雪道の心配は、十勝に帰ってからの話だ。でも、地方にはいま、免許を返したくても返せない人たちがいる。年を重ねて運転に自信がなくなっても、車がないと暮らせないからだ。
路線バスが減れば、車がないと病院にも行けない。かといって免許を返せば、だれかに頼まないと買い物にも行けなくなり、自由が制限される。運転をやめて、人に乗せてもらうしかなくなった高齢者は、運転を続けた人に比べて、要介護になるリスクが約2倍だったという研究もある(2019年)。運転をやめても、電車やバス、自転車で出かけられた人は、1.7倍ほどにとどまった。出かける手段があるかどうかで、暮らしも健康も変わってくる。
国土交通省も、自動運転で、こうした移動の足がない地域をなくしていくことを掲げている。自動運転の車は、ジムに通ったり、友人と会う機会を増やしたりと、行動範囲を広げてくれるかもしれない。免許を返したくても返せない高齢者にとって、ロボタクシーは心強い味方になると思う。
5. わたしの見方
アラン・ケイ(1971年)
アラン・ケイは、アメリカのコンピューター科学者だ。いまのパソコンやタブレットのもとになる考えを、1970年ごろに描いた人として知られている。この言葉は、未来がどうなるかを当てようとするより、自分たちで作ってしまえばいい、という意味だ。
自動運転の未来も、いま作っている人たちがいる。東京でも十勝でも、もう走り始めている。
車は、東京では贅沢品になり、地方では生活必需品のままだ。ロボタクシーは、東京では車を持たない暮らしを加速させ、地方では免許を返せない人の足になるかもしれない。わたしは大歓迎だ。
6. まとめ
- 20〜24歳で免許を持つ人の割合は、10年で80.7%から78.6%で、ほとんど変わっていない。免許を持つ人が減ったのは、若い人そのものが減ったから
- 減っているのは、1世帯あたりの車の数。東京は0.40台で、全国でいちばん少ない
- 都市の大きさで見ると、車にいちばんお金を使っているのは小さな市や町村。地方では、車は贅沢品ではなく生活必需品
- アメリカのロボタクシーは週50万回超。東京は2027年中の運転手なしの運行をめざす
- 免許を返そうと考えた75歳以上の7割近くが、ためらう理由に「車がないと不便」を挙げた。ロボタクシーは、そんな人たちの助けになると思う
- わたしはゴールド免許のペーパードライバー。十勝に帰ったら、本当は全自動の車で動きたい。とくに冬の雪道が気になる
・免許と教習所、自主返納:警察庁「運転免許統計」令和7年版、平成27年版。1992年の教習所の卒業者数は、全日本指定自動車教習所協会連合会の資料から
・人口:総務省「国勢調査」(2015年、参考表:不詳補完結果)、「人口推計」(2025年10月1日)
・教習料:総務省「小売物価統計調査」(2026年8月、自動車教習料)
・1世帯あたりの車:自動車検査登録情報協会「都道府県別の自家用乗用車の普及状況」(2026年3月末)
・町村と大都市の車の台数:内閣府「消費動向調査」二人以上の世帯 第5表(2026年3月末)
・車にかかる支出と駐車場代:総務省「家計調査」(2025年、2人以上の世帯)、何が入るかは収支項目分類
・Waymo:アルファベット 2026年第1四半期の決算、Waymo公式ブログ(2026年9月1日)、Waymoの安全データ
・東京のロボタクシー:GO株式会社の発表(2026年9月15日)
・日本の自動運転、死亡事故の原因:国土交通省「自動運転の普及・拡大に関する取組」(2026年1月29日)、目標は国土交通省の資料
・ティアフォー:同社の発表
・返納をためらう理由:警察庁の委託調査(2015年)
・雪道:北海道警察「スリップ事故の発生状況」、上士幌町 自動運転バス、ソフトバンクニュース(BOLDLY、2023年3月13日)、帯広市 自動運転バス、Waymo公式ブログ(2025年10月27日)
・運転をやめることと要介護:平井寛・市川政雄ら(Journal of Epidemiology、2019年)。愛知県の65歳以上で運転していた2,844人を6年間追跡したもので、運転をやめた人は140人。約2倍(2.16倍)は、そのうち人に乗せてもらうしかなかった77人
・路線バスの廃止:国土交通省の資料(2023年度)
・アラン・ケイの言葉:1971年、ゼロックスのパロアルト研究所での会議での発言とされる




