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ROEはオワコンなの? バフェットの言葉とアンソロピックの届出書で確かめてみた
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ROEはオワコンなの? バフェットの言葉とアンソロピックの届出書で確かめてみた

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ごまもち
🐾 ごまもち
ろえって、なに? おいしいの?🐾
あずき
あずき
おいしくはないかな。「アールオーイー」って読むんだよ。株を選ぶときに見ている数字なんだ。

株を選ぶとき、必ず見る数字はあるだろうか。

わたしは、日本の高配当株を選ぶとき、ROE(自己資本利益率)を見ている。8〜10%が合格ライン。高いほど良い。

11月1日の日経新聞に、「アンソロピックIPOの創造と破壊 ROEはオワコンか」という見出しがあった。IPOは株式の新規上場のことで、オワコンは「終わったコンテンツ」の略。もう古い、という意味だ。

でも、本文は有料で、わたしが読めたのは最初の2段落だけだ。日経がどう答えたのかは、わからない。それでも、見出しの問いは気になった。自分の物差しが古くなっているなら、困る。そこで、ROEとは何か、なぜ「オワコン」と言われうるのかを、読める資料で調べてみた。

先に答えを言うと
📏「ROEって何?」
→ 株主のお金(純資産)で、1年にどれだけもうけたかの割合。1,000万円で100万円もうければ10%だ
🤖「なぜ、オワコンと言われうるの?」
→ わたしの見立てでは、アンソロピックのような会社だと、計算しても意味のある数字にならないから。赤字なのに、半年分のROEはプラス63%になる
📜「本当に、オワコン?」
→ わたしは、そう思わない。ROEの弱点は、バフェットが40年以上前に、カッコの中の注意書きで書いていた
🐾「わたしは、どうする?」
→ これからも、ROE8〜10%を合格ラインとして見る。ただし、自己資本比率と一緒に
順番に見ていく。

1. ROEって何?

ROEは、英語の Return on Equity の頭文字で、日本語では自己資本利益率と言う。株主のお金(純資産)で、1年にどれだけもうけたかの割合だ。

📏 ROEの計算のしかた
ROE = もうけ(純利益)÷ 株主のお金(純資産)
1,000万円を出してお店を始めて、1年で100万円もうかったら
100万円 ÷ 1,000万円 = ROE 10%
わたしが作った例。純資産(自己資本とも言う)は、会社の持ち物から借金などを引いた残り。株主が出したお金と、これまでのもうけをためたお金でできている

同じ1,000万円で50万円しかもうからないお店(ROE5%)と比べると、100万円のお店のほうが、お金を上手に働かせていることになる。株主から見ると、預けたお金がどれだけ働いているかの通信簿だ。

日本で「8%」という目安が広まったきっかけは、2014年8月に経済産業省が出した報告書だ。まとめ役の先生の名前から、伊藤レポートと呼ばれている。世界の投資家と話すなら、ROEは8%を超えるのが望ましい、とした。

アメリカでは、投資家のウォーレン・バフェットが、早くからROEを大事にしてきた。1979年分の株主への手紙に、こう書いている。

経営の成績を測るいちばんの物差しは、株主のお金で、どれだけ高い率でもうけたかだ。1株あたりの利益が、毎年増え続けることではない。

実は、この文の途中には、カッコの中の注意書きがある。それは4章で読む。


2. アンソロピックで、ROEを計算してみると

では、ROEが「オワコンか」と言われるきっかけになった会社で、実際に計算してみる。

アンソロピックは、アメリカのAIの会社だ。10月26日に、上場(株式市場で、だれでも株を売り買いできるようにすること)のための届出書を出した。そこに並んだ数字が、これだ。

🤖 アンソロピックの数字(届出書より)
金額
売上(1〜6月)
162.9億ドル
本業の損益(1〜6月)
7億ドルの赤字
最終の損益(1〜6月)
807億ドルの赤字
 うち、帳簿の上の損
724億ドル
純資産(6月末)
マイナス1,276億ドル
Anthropic, PBC「Form S-1」(アメリカ証券取引委員会に提出、2026年10月26日)。帳簿の上の損は、お金が出ていかない損(くわしくは下で)。最終の損益には、本業と帳簿の上の損のほかの損益も入る

ROEは、もうけ÷純資産だ。1〜6月の赤字を、6月末の純資産で割ると、こうなる。

マイナス807億ドル ÷ マイナス1,276億ドル = プラス63%

赤字なのに、ROEはプラス63%。半年分だけで、わたしの合格ライン(1年で8%)を大きく超えてしまう。マイナスをマイナスで割ると、プラスになるからだ。計算はできても、数字に意味はない。

なぜ、こんなことになるのか。割る数と割られる数の両方に、理由がある。

割る数(純資産)が、マイナス

🤖 アンソロピックの純資産が、マイナスになるわけ(6月末)
持っている財産1,474億ドル借金など+投資家のお金借金など 1,175投資家のお金 1,575この差が、純資産マイナス1,276億ドル
Anthropic, PBC「Form S-1」の6月末の数字。単位は億ドル。投資家のお金は、上場前に投資家が出したお金(転換優先株という、上場するとふつうの株に変わる株)

アンソロピックは、1,474億ドルの財産を持っている。でも、借金などが1,175億ドル、上場前に投資家が出したお金が1,575億ドルある。投資家が出したこのお金は、上場するまで、帳簿の決まりで純資産に数えない。だから、純資産がマイナスになる。

上場して、この分がふつうの株に変われば、純資産はプラスに戻る。経営がうまくいっていないから、マイナスになっているわけではない。

割られる数(もうけ)が、帳簿の上の損でふくらんでいる

1〜6月の赤字807億ドルのうち、724億ドルは、転換社債などの帳簿の上の損だ。転換社債は、あとで株に替えられる約束がついた借金のこと。届出書には、会社の値打ちが上がるほど、この損が大きくなると書かれている。

例えると、「将来、お店の持ち分と交換できる引換券」をつけて、お金を借りたのに近い。お店の評判が上がると、引換券の値打ちも上がる。お店から見ると、将来渡す持ち分の値打ちが上がったことになる。その値上がりのぶんを、お店は損として帳簿に書く。でも、お財布からお金は出ていかない。

本業の損益は、7億ドルの赤字だ。売上が162.9億ドルある会社としては、トントンに近い。

いちばん大きな約束は、ROEに映らない

日経の記事が最初に挙げていた数字もある。AIを動かす設備の代金として、これから少なくとも4,170億ドル(約66兆円)を払う約束だ。届出書によると、2026年に入ってから結んだ契約の合計で、データセンターや設備を借りる契約が中心になっている。始まるのは2026〜2027年で、期間は1年未満から20年まで。

まだ始まっていない約束なので、いまの帳簿にはほとんど出てこない。それでも、大きさは、借金など(1,175億ドル)の3倍を超える。

この66兆円は、先行投資に近い。AIを動かすデータセンターを、最長20年先の分まで、先に押さえている。

ROEは、いまの帳簿の数字だけで計算する。この会社でいちばん大事な「66兆円に見合う売上が、これから入ってくるか」は、ROEには映らない。


3. 世界一有名な先生は、別の物差しで測っていた

では、こういう会社は、何で測ればいいのか。

アスワス・ダモダラン教授は、ニューヨーク大学で、会社の値段のつけ方を教えている。届出書が出た2日後の10月28日、アンソロピックの値打ちを自分で計算して、ブログで公開した。

🎓 ダモダラン教授の計算(10月28日のブログ)
教授の考え方
出発点
2036年に、売上が約1兆ドルになる
設備などの支払いの約束
借金と同じものとして差し引く
724億ドルの帳簿の上の損
お金が出ていかない損として扱う
答え(会社の株の値打ち)
1.475兆ドル(約232兆円)
Aswath Damodaran「The Anthropic Prospectus Arrives: My (but not the) IPO valuation!」(Musings on Markets、2026年10月28日)。1ドル157.5円で計算

教授の計算は、過去の帳簿ではなく、10年後の姿から始まっている。

ブログの中に、ROEは出てこない。ROEが悪い、と言っているわけでもない。ただ、この会社を測るために、別の物差しに持ち替えている。

教授のブログによると、上場の値段は1.5〜2兆ドルと言われている。教授は、自分の答えより大きく上で売り出されたら「お祭り騒ぎには加わらない」と書いた。最後は、投資は個人の判断なので、自分の数字で計算してみてほしい、と読者に呼びかけている。


4. それでも、ROEはオワコンではない

ごまもち
🐾 ごまもち
じゃあ、アールオーイーは、もうつかわないの?🐾
あずき
あずき
ううん。使い方の注意書きが、最初からついていたんだよ。

1章のバフェットの手紙には、カッコの中の注意書きがある。全部を読むと、こうなる。

経営の成績を測るいちばんの物差しは、株主のお金で、どれだけ高い率でもうけたかだ(借金をしすぎず、帳簿の小細工もせずに)。1株あたりの利益が、毎年増え続けることではない。

ROEの弱点は、バフェット自身が、40年以上前にカッコの中で書いていた。弱点は2つある。

1つめは、借金だ。同じ商売でも、元手のうち借金でまかなう分を増やし、自分のお金(純資産)を小さくするほど、ROEは高く見える。野村総合研究所の解説も、もうけが増えていなくても、純資産を減らせばROEは上がる、と指摘している。

🏪 同じ商売でも、借金を増やすとROEは高く見える(単位:万円)
Aのお店自分のお金 800200ROE 12%自己資本比率 80%Bのお店200借金 800ROE 42%自己資本比率 20%自分のお金(純資産)借金
わたしが作った例。どちらのお店も、元手は合わせて1,000万円で、本業のもうけは年100万円。借金の利息は年2%で、税金は考えない。Aは利息4万円を払って96万円が残り、96÷800で12%。Bは利息16万円を払って84万円が残り、84÷200で42%。自己資本比率は、元手のうち自分のお金の割合

AとBは、同じ商売をしている。それなのに、借金の多いBのほうが、利息を払ったあとでも、ROEは3倍以上高い。ROEだけを見ていると、Bのほうが良いお店に見えてしまう。

2つめは、帳簿だ。バフェットが注意したのは帳簿の小細工だ。アンソロピックの帳簿は小細工ではなく、決まりどおりのものだけど、それでも2章のように、ROEはここまでゆがむ。

つまり、ROEは、借金が多すぎず、帳簿の数字がふつうの会社で使う物差しだ。2章でROEが役に立たなかったのは、ROEが古くなったからではない。その条件に合わない会社だったからだ。


5. わたしは、ROEをこう使う

わたしの答えは、ROEはオワコンではない、だ。これからも、8〜10%を合格ラインとして見る。

ただ、ROEは、1つだけで決める数字ではない。わたしが高配当株を選ぶときは、自己資本比率と一緒に見ている。

🐾 わたしが高配当株を選ぶときの、2つの数字
わたしの目安
扱い
自己資本比率
40%以上。理想は60%以上、80%は最高
チェックリストの8項目の1つ
ROE
8〜10%が合格ライン。高いほど良い
8項目の外の、参考の数字
自己資本比率は、会社の持ち物のうち、借金ではないお金(純資産)の割合。8項目は、売上・EPS(1株あたりの利益)・営業利益率・自己資本比率・営業キャッシュフロー・現金・配当・配当性向

自己資本比率が高い会社は、借金が少ない。借金を増やしてROEを高く見せている会社は、自己資本比率で引っかかる。4章のBのお店は、自己資本比率20%なので、わたしのチェックでは落ちる。バフェットのカッコの中の「借金をしすぎず」を、わたしは別の項目で確かめていることになる。

アンソロピックのように純資産がマイナスの会社は、自己資本比率もマイナスになる。わたしの物差しでは、そもそも測れない会社だ。物差しが合わない、というだけだ。

わたしは、AIの会社の多くを、オルカン(世界の株にまとめて投資する商品)とS&P500(アメリカの代表的な500社の株)を通して持っている。アンソロピックも、上場して、オルカンやS&P500が目安にしている会社の一覧(指数)に入れば、自然とその中に入ってくる。1社ずつ測れない会社は、指数にまかせる。

英語の原文では
I suppose it is tempting, if the only tool you have is a hammer, to treat everything as if it were a nail.
日本語にすると
持っている道具が金づちだけなら、何でも釘のように扱いたくなるのだろう
アブラハム・マズロー『The Psychology of Science』(1966年)

アメリカの心理学者、アブラハム・マズローのことばだ。

マズローは、この一文の前に、よくできた自動洗車機の話をしている。車を洗うことしかできない機械なので、中に入ってきたものは、何でも車として扱ってしまう。人も同じで、得意な道具を1つしか持っていないと、どんな問題もその道具に合わせて見てしまう、という話だ。

ROEは、よくできた金づちだ。日本の高配当株という釘には、いまもよく効く。でも、アンソロピックのような会社は、まだ釘の形をしていない。

だから、ROEという金づちではなく、他の新しい道具が必要なのかもしれない。


6. まとめ

  • ROEは、株主のお金で1年にどれだけもうけたかの割合。日本では、2014年の伊藤レポートから8%が目安になった
  • アンソロピックで計算すると、赤字なのに、半年分のROEはプラス63%。純資産も利益もマイナスで、数字に意味がない
  • 純資産のマイナスは上場前の帳簿の決まり、赤字の大半はお金の出ていかない帳簿の上の損だ
  • 66兆円の支払いの約束は、いまの帳簿にほとんど出てこない。ROEには映らない
  • ダモダラン教授は、ROEではなく、10年後の姿から会社の値打ちを計算していた
  • ROEの弱点は、バフェットが1979年分の手紙のカッコの中に書いていた
  • わたしは、ROE8〜10%を見続ける。ただし、自己資本比率と一緒に
🐾 次に読むなら
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📚 参考にした情報源 ・きっかけの見出し:日本経済新聞「アンソロピックIPOの創造と破壊 ROEはオワコンか」(11月1日、有料)
・アンソロピックの数字:Anthropic, PBC「Form S-1」(アメリカ証券取引委員会、2026年10月26日)
・ダモダラン教授:Aswath Damodaran「The Anthropic Prospectus Arrives: My (but not the) IPO valuation!」(Musings on Markets、2026年10月28日)
・ROE8%の目安:大和総研「ROEの目標設定に際し、IRにおける時間軸を考える」(2015年2月26日)(経済産業省「伊藤レポート」2014年8月の内容)
・ROEと借金の関係:野村総合研究所「『PBR1倍超』経営の実現に向けた課題と方策」(知的資産創造、2023年8月号)
・バフェットの手紙:Berkshire Hathaway「Chairman's Letter 1979」
・格言:Quote Investigator「If Your Only Tool Is a Hammer Then Every Problem Looks Like a Nail」(マズロー『The Psychology of Science』1966年)
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の考えと記録です。特定の銘柄や金融商品の売買をすすめるものではありません。アンソロピックの株の売買をすすめるものでもありません。

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TAGS#投資の考え方#高配当株#AI
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