ふるさと納税、10月から何が変わる? 変わるのは、寄附する側ではなかった
ふるさと納税のルールが、10月1日から変わる。最近、「10月から改悪」「9月中に寄附しないと損」という見出しをよく見かける。こう思った人も、いるはずだ。
🤔「9月中に、急いで寄附したほうがいい?」
😮「返礼品が減るの?」
総務省の告示と、今年3月に成立した法律を読んでみた。結論から言うと、寄附する人の側で変わることは、ほとんどない。控除の仕組みも、自己負担の2,000円も、返礼品は寄附額の3割までという上限も、そのままだ。
10月から変わるのは、寄附したお金のうち自治体の手元に残る割合と、返礼品が本当にその土地のものかの証明の2つ。どちらも、寄附を受ける自治体と、ポータルサイト(ふるなびや楽天ふるさと納税のような、寄附の窓口のサイト)などの業者に向けたルールだ。
わたしの今年の分は、もう済ませた。十勝の「よつ葉」贅沢バターセットと、「柳月」オリジナルスイーツセット。この2つを例に、順番に説明する。
1. 10月1日から、何が変わるのか
先に、全体を並べておく。
一方で、変わらないものもある。
1つ目の表の見直しは、どれも寄附する人の控除や返礼品の上限には触れていない。では、何が削られるのか。それを見るには、寄附したお金がどこへ行っているかを知る必要がある。
2. 4万円は、どこへ行っているのか
総務省は毎年、全国の自治体の集計を出している。7月に出た最新の数字では、2025年度に集まった寄附は1兆3,314億円。そのうち、募集にかかった経費が6,382億円で、47.9%だ。
わたしの上限の目安は4万円前後なので(4月の記事に書いた)、4万円に置き換えてみる。
全国平均で見ると、4万円を寄附しても、寄附先の町で道路や学校に使えるのは半分ほどだ。返礼品の調達に1万600円。残りの8,600円ほどは、送料や広告、事務の費用に使われている。
3. 自治体に残るお金を、段階的に増やす
10月からのルールの中心は、この「自治体に残るお金」の割合だ。3月に成立した法律で、下限が段階的に上がる。
2章の表と並べると、気づくことがある。2025年度の全国平均は52.1%。10月からの下限の52.5%に、全国平均でも届いていない。つまり自治体全体で見れば、何かを削らないといけない。
では、何を削るのか。返礼品の3割という上限は、今回は動いていない。返礼品の調達は、いま平均で26.5%で、3割の内側にある。削る先として総務省が4月の通知で挙げているのは、返礼品以外の経費、とくにポータルサイトなどへの手数料だ。
2025年度の寄附の97.2%は、ポータルサイトを通っている。ポータルサイトへの支払いのうち、返礼品の調達と送料を除いた手数料などは、ポータルサイトを通った寄附額の11.5%、1,490億円。4万円なら4,600円になる。
10月から削るよう求められているのは、寄附する人の控除や返礼品の上限ではない。寄附が町に届くまでにかかる経費のほうだ。
ただ、手数料を削りきれない自治体が、返礼品の中身で調整する可能性はある。量が少し減る、送料込みだったものが別になる。そこまでは、総務省の資料からは読めない。10月以降に、自分の好きな返礼品の中身が変わっていないかは、見ておきたい。
4. 返礼品は「その土地のもの」か
もう1つの変更は、返礼品の証明だ。
ふるさと納税の返礼品は、もともと地場産品に限られている。加工品なら、その地域の工程で相応の価値が生まれていることが条件だった。ただ、その計算のしかたが自治体によってばらばらで、同じ商品を複数の自治体が自分の地場産品だと言える状態だった。総務省の資料には、海外から6万円で輸入したワインを倉庫で保管して、12万円で自治体に納めた例が載っている。保管で6万円の価値が生まれた、という計算だ。同じワインを、一般の客には8万円で売っていた。
10月からは、価値の計算を値段をもとにするのが原則になる。作った会社が「価値の半分を超える部分がこの地域で生まれた」ことを証明し、自治体がその中身を一覧で公表する。ワインの例のような納め方を防ぐために、一般の小売価格もあわせて書く。
わたしが今年選んだ2つの返礼品、よつ葉のバターと柳月のお菓子についても、自治体が公表する一覧で、寄附する人が中身を確かめられるようになる。寄附する人にとっては、見られる情報が1つ増える、ということだ。
5. 193万円の上限は、年収1億円を超える人の話
「控除に上限ができる」という話も、10月の話と一緒に出てくることが多い。これは別の改正で、中身も時期も違う。
住民税から引かれる分(特例控除)に、193万円の上限が付く。報道によると、対象の目安は、独身の会社員なら年収1億円を超える人だ。家族がいたり、給与のほかに収入があったりすると、この線は変わる。始まるのは2027年の寄附分からで、今年の寄附には関係ない。
わたしの上限は4万円前後なので、この話は、わたしには当てはまらない。
6. 9月中に、急いだほうがいいのか
控除の面で見るかぎり、急ぐ理由はないと思う。控除も、2,000円も、返礼品の3割も、10月1日の前と後で変わらない。
急ぐ理由になりそうなのは、どうしても欲しい返礼品が、10月以降も残るか分からないときだ。証明できない返礼品や、名前を付けただけのグッズは、10月から選べなくなる可能性がある。その品が決まっているなら、9月中に寄附する意味はある。
オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア(アメリカ連邦最高裁判事、1927年の反対意見)
1927年11月、86歳のホームズが、税金をめぐる裁判で、判決に反対する意見の中に書いた一文で、いまはワシントンにあるアメリカの国税庁(IRS)の建物の入口に刻まれている。
裁判の中身は、保険にかかる税金の話だ。当時のフィリピンには、外国の保険会社と直接契約したら、保険料の1%を税金として納めるという決まりがあった。フィリピンで商売をしていたスペインの会社は、ロンドンの保険会社と結んだ保険にこの税金をかけられ、「国の外で結んだ契約にまで税金をかけるのはおかしい」と訴えた。最高裁の多数は、その訴えの一部を認めている。これに反対したのがホームズだ。この1%は、外国の保険をやめさせるための罰ではなく、れっきとした税金で、税金は保険に入れることも含めて、文明社会のために払うもの。それがホームズの理屈だった。
ホームズには、税金についてもう1つ話が残っている。のちに最高裁判事になるフェリックス・フランクファーターが、1938年の本に書いている。税金に文句を言った秘書に、ホームズはこう返したという。「税金を払うのは好きだ。税金で、わたしは文明を買っている」。
ふるさと納税は、税金の一部を、どの町に払うか自分で選べる仕組みだ。わたしが選んだ十勝の町に、4万円のうちいくら届くのか。今回の改正は、その割合を少しずつ上げていく話だ。
控除上限額のシミュレーターで、自分の上限の目安がすぐ分かります。わたしも毎年ここで上限を調べて、十勝の返礼品を選んでいます。
ふるなびで上限額を調べる →7. まとめ
- 10月からのふるさと納税の見直しで、寄附する人の側で変わることは、ほとんどない。控除の仕組み、自己負担2,000円、返礼品3割の上限はそのまま
- 変わるのは、寄附のうち自治体に残るお金の下限。50%から52.5%へ、2029年10月には60%へ上がる
- 2025年度の全国平均は52.1%。4万円の寄附なら、町に残るのは2万800円ほど
- 総務省が見直しを求めているのは、返礼品ではなく手数料などの経費。ポータルサイトなどへの手数料は、ポータル経由の寄附の11.5%
- 返礼品は、価値の半分を超える部分がその地域で生まれたことを値段で証明し、自治体が公表する
- 193万円の控除上限は、年収1億円を超える人が目安で、2027年の寄附分から
- 急ぐ理由になりそうなのは、欲しい返礼品が10月以降も残るか分からないとき
・返礼品の証明、名前入りグッズ、経費の公表:総務省「ふるさと納税の指定基準の見直し等」(令和7年6月24日)、同「ふるさと納税の指定基準の改正等について」(ワインの例もこの資料)
・2025年度の受入額1兆3,314億円、経費の内訳、ポータルサイト経由97.2%・手数料等11.5%(ポータル経由の受入額1兆2,947億円に対する割合):総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」(令和8年7月31日)
・193万円の上限(道府県民税77万2,000円+市町村民税115万8,000円、令和10年度分の住民税から=2027年の寄附分から):上記の税制改正の大綱。独身で給与だけの場合に年収1億円以上が対象という目安は日本経済新聞の報道
・わたしの上限の目安と返礼品:4月の記事
・ホームズの言葉と裁判の中身:Compañía General de Tabacos de Filipinas v. Collector of Internal Revenue, 275 U.S. 87, 100 (1927)(反対意見)。判決文は米国議会図書館(U.S. Reports)。原文は「Taxes are what we pay for civilized society, including the chance to insure.」。秘書とのやりとりは Felix Frankfurter, "Mr. Justice Holmes and the Supreme Court"(1938年)の「I like to pay taxes. With them I buy civilization.」(どちらもQuote Investigator)。訳はわたし




